今回行った相関分析からは、前回述べたもののほかにも多くの非効率な情報が明らかになったが、ここでの直接的な目的は、大きく経営革新に踏み出すか、あるいは座して死を待つかといった岐路に立たされている経営者に、この2つの選択肢以外にとるべき道は本当にないのかどうかを知ってもらうことが主な目的なので、分析はその一道具に過ぎない。
もちろん、あらゆる企業にとって経営革新は必要であり、これを怠ってきたことが市場との乖離を招き、活力を失うというケースは多い。多くの経営セミナーなどでも、これからの企業はベンチャーでなければ生き残れないなどといった最もらしいアドバイスを聞くことがあり、経営者は勇気づけられるどころか、かえって落ち込んでしまうこともあった。
しかし、ベンチャー企業が継続して存在し続けられるかどうかは、極めて不透明であり、ゴーイングコンサーンが絶対条件である経営者にとっては、あまりにもハードルが高いと感じてしまうことも少なくない。一方、そうした選択と集中を回避した戦略をとっても立派に生き残っている企業も多い。つまり、消極策が結果的に正解だったというわけである。
どちらが正しいかという議論は別の機会に譲るとして、多くの中小企業はベンチャー型ではないが今も厳然と存在し、その役割を果たしているからこそ存続しているとみることもできる。このように安全策を講じた企業の経営者から見ると、「選択と集中」という戦略は極めて危ういものだと感じている。ただ、私はこうした考え方に組みするものではない。
いずれにしても、「選択と集中」が唯一のものではないことは確かであり、時代背景によってその言われ方もさまざまである。例えば、景気が上向きの時は、本業以外の事業を手掛けることを奨励したかと思うと、景気が低下し始めると、やはり、本業に集中すべきだという説が復活してくる。要するに、これらの議論はすべてあとづけの理論に過ぎない。
エイドリアン・J・スライウォツキーが、「プロフィト・ゾーン経営戦略」でも述べている通り、「顧客の選択」「価値の獲得」「差別化/戦略的コントロール」「事業領域」は時間の経過とともに変化する。このバランスを無視した「選択と集中」は危険であることは確かであるが、顧客に目を向ければ競争を回避し、存続し続けられる戦略は必ず見つかる。