協調戦略をとれない理由

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 自分の利得を最大限に高めようとして合理的判断をしたにも関わらず、ゲームの結果が低い利得しか得られないケースがある。これが「囚人のジレンマ」であるが、牛丼店やファストフード店などでも、同じような現象が生じることがある。というより、同一品質の商品を扱っている店舗では、常に協調戦略をあえて選択しないケースが多く見受けられる。

 ただし、ここでいう強調戦略とは談合などによるものを意味するわけではない。例えば、ある地区にあるファストフード店は、顧客獲得のために激しい価格競争を繰り広げ、売り上げを伸ばそうとする。しかし、両店の価格競争が続けば、消費者は歓迎するかもしれないが、店の利益は圧迫されることになる。このことは両店とも承知しているはずである。

 この時の両店(A.B)の利得は次のようであったとする。すなわち、A店B店ともに据え置き(12001200)、Å店据え置き・B店値下げ(400,1800)、Å店値下げ・B店据え置き(1800400)、Å店B店ともに値下げ(700,700)。この利得表をもとに最適戦略を考えてみると、明らかに両店は協調して価格を据え置く方がベストの戦略であることが見て取れる。

 つまり、A店、B店ともに価格を「据え置け」ば両店の利得はそれぞれ1200を確保できる。A店が価格を「据え置き」、B店が値下げしたとしたら、A店の利得は400、B店の利得は1800となる。A店が「値下げ」し、B店が「据え置く」とA店の利得は1800、B点の利得は1800、A・B両店が「値下げ」したとしたら、それぞれ両店の利得は700になる。

 このケースでは、「値下げ」が支配戦略となるが、同じくB店にとっても「値下げ」が支配戦略となっている。そして、A店とB店が「ともに値下げする」という戦略が「ナッシュ均衡」となり、両店の選ぶべき戦略は「値下げ」ということになる。しかし、この戦略を選択すると、A・B両店700の利得を獲得するが、据え置いた場合よりも500少なくい。

 それよりも、相手が出し抜いて値下げをしてしまうと、こちらの利得が400に落ちてしまうという形になってしまう。こうした状況を避けるために、A・B両店は対抗策として「値下げ」戦略に踏み切らざるを得ない。こうした戦略を選択せざるを得ない背景には、新規参入の防止など様々なものがあるとしても、賢明な選択とは言い難いように思われる。