コミットメントの戦略的価値

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 一般的に選択肢を多く持っていることは有利であるといえそうである。しかし、あえて自分を縛って選択自由をなくすことが、戦略的な価値を持つ場合がある。脅しは、相手に直接的に働きかける戦略であるのに対して、コミットメントは、これに反して、相手の行動とは無関係に、自分の行動の選択肢を狭めることを宣告するもので、効果が期待できる。

 コミットメントの典型的な形は、「契約」である。契約の場合は、契約を破ることで、訴えられたり、違約金を払うという状況は、自分を不利にするばかりではなく、むしろ自分を契約により拘束するような状況を作りだすことで、相手の信頼に足る約束や脅しを作り出し、自分に有利な状況にすることができる。つまり、戦略的な価値を増やすことになる。

 また、「契約」によらない場合でも、コミットメントすることにより、自分の選択肢を狭めることで、相手がこれを条件としたうえで、今後の展開を考えざるを得なくなるというような場合は、結果的に相手が選択する戦略を縛ることになる。例えば、戦略型ゲームの場合でいうと、複数のナッシュ均衡がある場合、自分が有利な均衡策を相手に選択させる。

 さらには、本来は戦略型ゲームであるものを、自分が早々と意思表示をすることにより、相手が後手に回るように仕向けることもできる。すなわち、チキンゲームはその典型で、同時に行動するかたちになっているが、コミットメントすることで、あたかも交互ゲームのような選択肢が生まれ、自分の選択した戦略に、相手が拘束されるというわけである。

 先手をとることはコミットメントによって自分を有利にする戦略でるが、先手を打つことが常に有利に働くとは限らない。例えば、「じゃんけん」を考えればわかるように、先手をとって自分が先に手を示せば、相手はそれを見て勝ちに行くことになるので、自分は確実に負ける。つまり、こうした構造をもつゲームでは、先に動いてはいけないわけである。

 自分が後に引けないような支配戦略を持って、相手の譲歩を引き出す戦略は、「背水の陣」や「瀬戸際戦略」などと論理的にはかなり似ている。このような戦略では、コミットメントによって自分を拘束することが大きな価値をもつが、それだけに、その信憑性を相手に伝えなければ意味がない。いわゆる「から脅し」では、相手に読まれてしまうことになる。