トリプルボトムライン型ビジネスモデル

 

 ニューヨークの投資銀行家であるイクパル・クアディーㇽがグラミフォンを設立するためにとった方法について、前に紹介されていた。彼の目標は、彼の母国であるバングラデシュの農村部において、誰もが電話サービスを使えるようにするというものであった。彼は、営利モデルによって、その目的を達成し、バングラデュの農村に大きな影響を与えた。

 バングラデシュの村は貧しく、電話を購入できなかったが、グラミフォンは、グラミン銀行のマイクロファイナンス機関と提携し、携帯電話を購入するためのマイクロローンを、地元の女性に提供した。女性は、自分の村で通話サービスを販売することで収入を得てローンを返済し、社会的地位を向上させた。これは、なんとも大胆なビジネスモデルである。

 グラミフォンは、電話サービスを全域に普及させ、収益を上げたほか、電話を販売する「ビレッジフォンレディ」たちに、収入の機会と社会的地位をもたらし、社会的な影響も与え、最終的に、農村部にいる20人の女性に収入獲得の機会を提供することとなった。

 彼女たちの社会的地位を上げ、携帯電話ネットワークによって60,000の村をつなぎ、ユーザーは1億人に達し、利益を生み出した結果、バングラデシュ政府の最大の納税者になった。こうした根本的問題解決型のビジネスモデルは、近視眼的な利益追求型の発想からは生まれない。環境問題や社会問題への強い使命感によって裏打ちされているものである。

 トリプルボトムライン型ビジネスモデルに対応するために、次の2つの結果を示す構築ブロックを加えることでキャンパスを拡張する。すなわち、(1)ビジネスモデルの社会的、環境上のコスト(マイナスの影響)、およびビジネスの(2)社会的および環境上の利点(プラスの影響)である。つまり、9つのブロックが11のブロックになるというわけである。

 費用を最小限に抑え、収益を最大化することによって利益を増やすように、トリプルボトムラインのビジネスモデルは、マイナスの影響を最小限にし、プラスの影響を最大化する。もちろん、このビジネスモデルに限らず、全てのビジネスモデルは、費用の極小化と収益の極大化がテーマではあるが、社会的コストを深く意識する点で大きな特徴がある。