ビジネスモデルの展望

 

 この本は、ビジョナリーやイノベーター、挑戦者たちがビジネスモデルに取り組むときのハンドブックとして示されたもので、新しいモデルをデザインするために必要な言語、ツール、テクニック、ダイナミックなアプローチを提供してきたが、最終章では、この本の価値につながる5つのトピックを取り上げ、ビジネスモデルの将来展望を試みている。

 一つは、公共および非営利セクターでのビジネスモデルインベーションの検証、二つ目は、コンピュータを使ったビジネスモデルデザインによって、紙ベースのアプローチを拡張し、ビジネスモデルの要素の複雑な操作を可能にすることの検証、三つ目は、ビジネスモデルとビジネスプラン関係の説明、四つ目は、ビジネスモデルを実行する際に発生する問題の指摘、最後は、ビジネスモデルとITの連携をいかに実現するかの検討である。

 まずはじめは、収益を超越した非営利ビジネスモデルについてであるが、キャンパスで起用されるのは、営利団体のみに適用されるものではなく、非営利団体や慈善団体、公共機関、およびソーシャルベンチャーにも、簡単にその技法を適用することができる。あらゆる組織は、「ビジネス」と定義されていないものでも、必ずビジネスモデルを持っている。

 組織が生き残るためには、価値を創造し、提供することによって、その費用をカバーするだけの収益を生み出す必要があるからである。異なるのは、何にフォーカスするかだけである。営利事業の目標は収益の最大化であり、一方の非営利組織では、環境問題、社会問題、公共サービスなどに焦点を当てたもので、収益以外の任務を持っているに過ぎない。

 こうした組織は、優れた企業家であるティム・クラークによると、「エンタープライズモデル」と呼ぶよう提唱されている。この本では、収益を超越したモデルについて、第三者の資金援助によって運営されるエンタープライズモデル(慈善活動、慈善事業、政府)と環境問題や社会問題への強い使命を持つトリプルボトムラインのビジネスに分けている。

 ここで、トリプルボトムラインとは、環境や社会問題だけではなく、ファイナンス上の問題にも関わるということを意味している。この2つは、収益源の違いによって区別されるが、直接的な結果として、2つの非常に異なるビジネスモデルのパターンを持っている。多くの組織は、この両方の長所を利用するために、2つのモデルを混ぜ合わせている。