管理する(その2)

 

 プロセスのフェーズである「リソースの結集」「理解」「デザイン」「実行」は、いずれも既存企業の視点からの取り組みが求められるが、ビジネスモデルを市場の反応にあわせて調整する「管理のフェーズ」においては特にそうした取り組みが重要である。例えば、「ビジネスモデルのガバナンス」という視点で考えてみると、どんなことがいえるだろうか。

 この場合、まず、ビジネスモデルのガバナンスの権限を持つ機関を設立されることが検討されなければならない。この部署の役割は、関係者を束ね、インベーションやリデザインのプロジェクトを立ち上げ、ビジネスモデルの進化を全体的に把握することにある。そこでは、企業全体を記述したビジネスモデルの「マスター」の管理を行うことになる。 

 このマスターテンプレートは、組織内のビジネスモデルプロジェクトの出発点として役だつ。このマスタービジネスモデルはまた、オペレーション、製造、営業販売といった異なる機能を持ったグループが、組織の包括的な目標に沿って連携するのにも役立つ。このように、企業全体の最適化を目指すためには、ガバナンスの権限をもつ機関は欠かせない。

 また、シナジーと競合の管理という視点からみると、ビジネスモデルガバナンスを行う機関の主な仕事の一つに、モデル間のシナジーを活用し、競合を回避するため、ビジネスモデル同士を連携させることがある。組織内のビジネスモデルを記述したキャンパスドキュメントによって、全体像を浮かび上がらせ、より良い連携を実現できる可能性が高まる。

 すでに成功をおさめた企業は、積極的にビジネスモデルの「ポートフォリオ」を管理する必要がある。音楽、新聞、自動車産業における成功企業の多くは、積極的なビジネスモデルの検査を怠り、結果として危機に陥った。こうした運命を避けるためのアプローチは、収益を上げるビジネスから、未来のビジネスモデルの実験へ資金を投入するビジネスモデルポートフォリオを開発するべきである。

 過去において、大きな成功をおさめた企業は、その時のビジネスモデルに自信を持ちすぎているためか、継続的にビジネスモデルを評価することを怠ってしまい、成功の犠牲になってしまうことが多い。こうしたことを防止するためにも、初心に帰り、状況を常に調査して、成功したビジネスモデルを、定期的に新鮮な目で見直してみることが必要である。