複数のビジネスモデル運営についての議論

 長い歴史を持つ企業の中で新しいモデルを実行するのは、すでに確立された既存のモデルと競合する可能性もあるため、非常に困難な場合も多い。新しいビジネスモデルを実行するには、異なる組織文化が必要になったり、これまで企業が無視してきた見込み客をターゲットとする必要があるかもしれない。既存モデルを陳腐化させてしまうかもしれない。 
 この問題について、学者の意見は2つに分かれている。その多くは、新しいビジネスモデルを別の組織へとスピンオフするよう提案している。もう一方の立場は、既存の組織内にいながらも成功できると主張している。例えば、コンスタンチノス・マルキデスは、新旧2つのビジネスモデルを同時管理する方法を決定するための2つの変数を提案している。
 最初の変数は、モデル間の衝突の深刻さであり、2つ目は戦略的な類似性である。彼はまた、統合か独立の選択だけが成功の要因ではなく、それをどのように実行するかが重要であるといっている。独立した組織で実行される場合でも、モデル間に起こる相乗効果は慎重にとり扱われるべきだという。また、リスクもまた決定する際の3つ目の変数である。
 ブランドイメージ、収益、法的責任などの観点から、新しいモデルがマイナスの影響を与えるリスクはどのぐらいか。2008年の金融危機のとき、オランダの金融グループであるINGは、海外市場でのオンラインおよび電話リテールバンキングサービスを提供するINGダイレクトユニットが原因で倒産しかけたが、そうなった原因はどこにあったのだろうか。
 こうした選択の問題は非常に困難が伴うため、たぶんに結果論として語られることもあるが、時間とともに変化するという側面もある。マルキデスは、時期によって統合や分離したりすることを検討すべきだと強調している。つまり、おかれている状況や時代背景によっても、その変数は大きく変動するし、別の変数を重視しなければならないこともある。
 アメリカのリテール証券ブローカーであるチャールズ・シュワブのインターネット部門であるe.Schwabは、当初、独立した組織として設立されたが、大成功を収めたのち、主要事業として再統合ざれた。イギリスの大手小売業者テスコのインターネット部門であるTesco.comは、統合されたビジネスラインから独立した組織へ移行することに成功している。