ダイムラーのCAR2GOビジネスモデル(その2)

 

このパイロットフェーズでは、技術システムのテスト、ユーザーの受容と行動に関するデータ収集、サービス全体の「ロードテスト」を行うことを目的としたものである。2009年2月には、車の台数を100台へと増やし、メルセデス・ベンツの店舗やダイムラー子会社の従業員にまで拡大した。3月末には、200台の車によって公開テストが実施された。

 この頃には、12万人のウルム市民や訪問者までが、このCar2goを利用できるようになった。時を同じくして、ダイムラーは75万人が住むテキサス州オースティンでのパイロットプロジェクトを発表した。ドイツでの試験の第一フェーズと同様に、Car2goは、市職員などの限られたユーザーグループから始められ、その後一般公開される予定であった。

これらのパイロットは、まさにビジネスモデルのプロトタイプと見なすことができる。今、Car2goのビジネスモデルのプロタイプは、組織へと固定されようとしている。この本の著者が執筆した時点では、ダイムラーはまだ、Car2goを内部化するか別会社としてスピンオフするか決めていなかった。つまり、このテストの結果がその鍵であったのである。

ダイムラーは、ビジネスモデルの設計から始め、これらのコンセプトのフィールドテストを行い、歴史の長いビジネスとCar2goの関係を評価することにした。新しいビジネスモデルの組織構造(統合か分離か)についての決定はともかく、ドイツ、イタリア、イングランド、オーストリア、オランダ、アメリカ、カナダなど世界23都市にまで広がっている。

これは、長い年月をかけて定着した車社会の在り方に一石を投じたものであるが、このビジネスモデルが如何に的を射たものであるかが解る。社会のシステムは、一旦定着するとその枠組みを変えることによるメリットよりも、これまでのシステムを踏襲することのメリットの方を重く見る傾向があるため、これを打ち破るためにはかなりの負荷がかかる。

 革新的ビジネスモデルによって、新しい枠組みをコーディネートするため、壮大なパイロットフェーズによる試験を断行したものと思われるが、そのため、市民を味方につける仕掛けが随所に施されていた。何よりも使用料金が安く長時間利用できる、予約不要で、要望に合わせて無制限に利用できる、有効エリア内であれば、乗り捨てできるなどである。