任天堂ゲーム機Wiiのブルーオーシャン戦略

 任天堂のゲーム機であるWiiをブルーオーシャン戦略の観点から見ると、競合であるソニーとマイクロソフトとの差別化戦略そのものである。ソニーのプレイステーション3やマイクロソフトのXbox360と比較すると、任天堂は根本的に異なる戦略とビジネスモデルを追及している。任天堂は、ゲーム機そのもののパワーやパフォーマンスには拘らない。
 ゲーム機市場は、熱心なゲームファンの要求がエスカレートし、高機能化が進みすぎ、熱狂的なファン以外はついていけないレベルに達していた。コントローラーも当然複雑化し、難しくて近寄りがたいものになっていた。この解決手段として取り組んだのがブルーオーシャン戦略であった。このとき採った4つのアクションは以下に示すとおりである。
 取り除く:高級感、リアリティのある映像、スピード感、複雑な操作を競うメニュー、高機能なコントローラー。減らす:画像の美しさ、高度な操作性、プレイ時間短借(短編化)。増やす:ストーリー性、顧客の遊ぶ空間。付け加える:共感、顧客創造性喚起、顧客の個性への働きかけ、脳への刺激や学習機能などで、潜在市場の掘起しを目指している。
 筋金入れのゲームファンにとって大切な要素である技術的性能、グラフィック品質、ゲームのリアリズムという点で競争してきた業界において、これは過激なスタンスであったが、任天堂は、従来の熱狂的なゲーマーよりも幅広い層をターゲットにして、プレイヤー同士のやり取りを中心とした、新しい形態のゲームの提供に大きく舵を切ったわけである。
 Wiiにおいて、任天堂は技術的にはライバルマシンを下回るゲーム機を市場に投入することになったが、新しいモーションコントロール技術による楽しさを押し出した。プレイヤーは、「魔法の杖」のようなWiiリモコンによって、物理的な動きを通じてゲームを操作することができるようになり、たちまちカジュアルなゲームファンに受け入れられていった。
 すなわち、任天堂の新しいビジネスモデルは、「ハードコア」なゲーマーからカジュアルなゲームファンにシフトすることによって、ゲーム機のパフォーマンスを減らし、多様な楽しみをもたらすモーションコントロールの新要素を付け加えることができた。また、チップ開発を取除き、既成の部品を増やすことで、コストを削減し価格の引下げを実現した。