シルク・ドゥ・ソレイュのブルーオーシャン戦略

 ブルーオーシャン戦略で成功した企業の代表格といえば、カナダのパフォーマンス集団シルク・ドゥ・ソレイュがあげられる。サーカス市場のリーディンカンパニーであるリングリングブラザー&B&Bも小規模地域サーカスも、戦略キャンパスに価値曲線を描いてみると、ほとんど同じであるが、リングリングブラザー&B&Bは各要素のスコアが高い。
 価値曲線は、横軸に各社が重視している優先事項や戦略要素(価値軸)を描いていく。左側から「価格」「取り除く要素」「減らす要素」「増やす要素」「付け加える要素」の順にプロットして、比較しやすくしてみる。そして、縦軸には他社や業界標準との相対的なスコアを定量的に描く。シルク・ドゥ・ソレイュの場合の4つの要素は以下の通りである。
 その4つのアクションのフレームワークは、取り除く:花形パフォーマー、動物によるショー、館内でのグッズ販売、隣接するショーエリア、同時進行の複数のショー。減らす:楽しさやユーモア、危険やスリル。増やす:個性あふれる独自のテント。付け加える:テーマ性とストーリー性、快適な鑑賞環境、複数の演目、芸術性の高い音楽とダンスである。
 これをビジネスモデルキャンパスに当てはめて考えてみると、新しい価値提案をすることにより、これまで家族中心であった顧客セグメントを劇場やオペラの観客にフォーカスでき、チケットの販売価格も大幅にアップさせることができた。その一方で、動物の世話に要した管理費用を大幅にダウンすることができ、利益率も向上させることを可能にした。
 ここで特筆すべきことは、「減らす」を中心にして、価値曲線が大きく交差していることである。つまり、シルク・ドゥ・ソレイュは、楽しさやユーモア、危険やスリルなどは、ショーのメリハリを保つためには、全くなくすことを避けたわけである。ここが業態転換とは一味違う取り組みであり、事業の境界線の引き直しが重要であることを意味している。
 なお、シルク・ドゥ・ソレイュの場合は、メリハリのある価値曲線が描けたという点で幸いしているが、業界や企業によっては、要素を定量的にスコア化することが困難なことも考えられる。しかし、複数の異なったメンバーにより多面的な観点から、討議できるビジネスモデルキャンバスにおける手法を用いれば、妥当な評価が可能になると思われる。