物語の具体的な表現方法

  ストリーティングにより、企業トップ、投資家、株主、従業員といった観客に、新しいビジネスモデルをよりリアリティのあるものに感じてもらうことが目的である。そのためには、観客を主人公に仕立て、その人の心を引き込み、手に触れられるような方法で伝えることである。ただ、観客によって、異なる視点を持った異なる主人公を使うのもいい。
 異なる視点とは、例えば企業側の視点でいえば、従業員という観察者を設定して物語を語ることである。ここでは、新しいモデルがなぜ必要なのかという視点で、従業員を主人公にすることで、新しいビジネスモデルが顧客の問題を解決するのを従業員が何度も目にすることになり、資源や活動、パートナーシップをより活用できることを示すことになる。
 また、顧客の仕事を見据えた顧客視点が物語の出発点になる。顧客を主人公にし、顧客の視点から物語を語り始めると、そこに顧客が直面している問題と、その解決のためにやらなければならないことを示すことになるから、企業はどのようにして顧客のために価値を作り出すのかも説明する。物語ることで顧客は自分の生活との関わりがイメージできる。
 すなわち、顧客が何を受け取り、それによって顧客が喜んでお金を払うかどうかを説明できる。いくつかのドラマを物語に盛り込み、企業が顧客の生活を快適にする様子を記述する。そして、理想的には、企業が顧客のための業務をどのように処理したのか、リソースや活動内容と一緒に織り込んでいく。ここで重要なのは顧客視点がぶれないことである。
 物語は、現実と虚構の境界にあるものであるから、ビジネスモデルを語るには将来に対する可能性を可視化するものであることが望まれる。すなわち、現在のビジネスモデルが時代遅れで、将来の競争環境には適応できないことを物語によって伝えなければならない。現実と虚構の境目にある聞き手を未来へと誘うことが、語り手としての重要な役割である。
 組織は、時として、競争環境がどのように進化するかについて、強力なアイディアを得ることがある。物語の文脈においては、新しい競争環境において、組織が打ち勝っていくために、どのようなビジネスモデルが理想的な方法であるかを示すことが、物語の目的であるから、アイディアを刺激すると同時に、変化を正当化する説得力も備える必要がある。