絶えざる革新を怠ったツケ

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 国や地自体が既存企業に経営革新を促す理由は痛いほど解る。新規創業のベンチャー企業などが安定した企業として生き残る確率の低さを考えると、長期にわたって存続し続けた企業に更なる飛躍を期待することの意味は大きい。企業が経営革新を断行し活力が蘇れば、雇用の安定が図られ消費の拡大も期待でき、国民の生活を豊かに保つことができる。
 長期にわたって存続し続けた企業は、それなりの企業努力により社会に受け入れられてきた実績があるはずであるから、企業がもともと持っている革新機能を呼び起こせば、復活を遂げることは可能であると考えるのは合理性がある。しかし、角度を変えてみれば、革新機能が錆びつくまで放置していたという事実も同じぐらい重視すべき視点である。
 近年は、新規創業に対する支援施策も充実してきているが、経営者が創業を決意し、会社を立ち上げ経営活動を実践するのは、経営者の企業理念によるものであり、支援施策を当て込んでのものではないから、経営者の強い使命感がバックボーンにあるはずである。中小企業の中には、今でもこうした強い志を持ち続けている経営者が多く存在している。
 こうした志あつき経営者に言わせると、経営革新は企業が自ら行うもので、それを怠ったために衰退しつつある企業に補助金などの助成をするのは筋違いである主張する。少し話は飛躍するが、このたびの東日本大震災に際してとられた各種支援施策などに対しても、かなり過剰ではないか、ましてや金融円滑化法などによる延命策は論外と感じている。
 もっとも、企業が経営革新を志向する動機はさまざまであるから、一概に、これに対する支援施策を批判することも極端に過ぎるが、鉦や太鼓の鳴り物の魅力によって革新機能を呼び起こせるほど単純なものとも思えない。経営資源の脆弱な中小企業にとって、今最も求められているのは環境変化への対応力と事業機会を如何にして見つけられるかである。
 時間的制約を考えると、そうのんびりしている暇がないのかもしれないが、現在の支援施策はあまりにも性急過ぎて、本もの企業を育てるには適していないように思われる。少し遠回りのようでも、顧客が優先している事項を予測し、組織力や製品・サービスの差別的優位性を客観的に評価できる力を養成することに力点を移した施策を講ずるべきである。