持続的競争優位性の構築

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 既存の市場に向けて新製品を開発するとか、既存の製品を新しい顧客層に向けて提供するなども、類型的にいえば立派な経営革新であるが、企業が本来目指すべき経営革新としてはインパクトが弱すぎる。こうした新製品開発や市場開拓は、多くの企業がほぼ日常的に取り組んでいるが、そうした企業ではこれを経営革新とは呼んではいないはずである。
 形式要件を整えているということは、確かに必要なことではあるが、企業経営は、投下した資本の回収と顧客の問題解決のバランスによって、経営者が踏み切る価値があるかどうかを判断すべきものであり、助成金や融資を目当てに表面をつくろうような経営革新は、投資を上回るリターンが期待できるはずがなく、ある種の背信行為といわざるを得ない。
 経営革新は、ただ新しければ足りるものではなく、顧客の優先事項がどのように変化しているかを見極め、これに対応しようという姿勢が問われるものであるのに、経営の根幹となる経営方針をリフォームすることなしに、新製品の開発や新市場の開拓を志向するのは、まさに内向きの論理であり、到底市場原理にかなうビジネスモデルとはなり得えない。
 経営革新は、時間との戦いであり、どんなに優れたビジネスモデルでも、市場の要請にかなうものでなければ意味がないので、競合他社の動向に対して機先を制するものであることも確かであるが、これまでの戦略のまずさを顧みることなしに突き進むのも危険である。この辺のタイミングを見極め、望ましい方向に導くのがコンサルタントの役割である。
 経営革新という衣の下に、運転資金の調達という本音を隠していることを知ってか知らずか、革新計画というコンクリートで固める作業に加担してしまう。すべての経営革新計画がこのタイプだとまでは言えないが、とにかく途中でとん挫する計画が多いという現実を見ると、現在の革新支援の在り方を見直すことが先決であるように思われてならない。
 利益や付加価値が一定の割合で増加することが条件となっている現行の経営革新計画は、経営革新を実践した結果到達する目標値を示すものであり、そのためには、持続的競争優位性のモデルであることが求められる。すなわち、経営革新はその要件をクリアできれば足りるものではなく、確実に成果が上がる計画であることを肝に銘じなければならない。