発想が貧しい経営革新

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 経営革新の類型は、基本的にはアンゾフの成長ベクトルと同じである。すなわち、製品と市場の組み合わせによって、収益力の強化を狙っているものであるから、新製品の開発や生産方法の導入などによって、現在の市場により深く浸透するか、あるいは新たな市場に進出するかが基本戦略ということになる。ただ、こうした単線型の戦略では心持てない。
 なぜ経営革新が難しいのかというと、その理由は大きく分けて2つある。一つは、長年に亘って築きあげられた企業文化が妨げになる場合である。このタイプ企業は、過去に大きな成功を体験していることが多く、あまりじたばたしないで顧客が戻って来るのを待つ方が、怪我が少なくて済むという幹部が多く、全社が一丸となって取り組む体制にはない。
 もう一つは、儲かると思う事業なら何でもやるというタイプである。企業経営はボランティアではないので、投下した資本を回収するとともに、それを上回る収益の獲得を期待するのは当然であるが、自社の経営資源や経営理念に基づいた事業領域を設定していないため、無節操に多角化に踏み切る場合である。いずれのタイプも革新効果は期待できない。  
 ただ、前者のタイプの場合でも、経営者が強いリーダーシップを発揮して経営革新を断行することで突破口を見つけ出したというケースもある。また、多くの中小企業にこのタイプが多く見られる。もともと経営ビジョンや目的というものが曖昧であったため、ある時点で獲得した資金を儲かりそうな事業に次々投下して、経営資源を無駄遣いしてしまう。
 はじめは、規模の経済が働き、従業員のローテーションなども効果的に行われることもあるが、一旦、売り上げが減りだすと対処するすべがなく、ジリジリと後退を余儀なくされ、結局は中核的事業にまで悪影響を及ぼすことになる。こうした状況に陥ってしまった企業が、あわてて経営革新を志向したとしても、またぞろ儲かるものを探すだけになる。
 需要が供給を上回っていたバブル期とは違って、現代は、「優れた商品」や「差別的商品」というものはライフサイクルが短く、すぐに後発企業に追いつかれてしまう。だからこそ、新しいだけではなく、強固なビジネスモデルのデザインが必要になってくるわけであり、単に、外部のコンサルタントが作成した計画では、市場競争で生き残ることはできない。