まずは現状分析から

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 経営革新がなぜ必要なのかは改めて言及するまでもなく、ほとんどの経営者が認識していることであるが、実際には市場における存在感を失いつつある企業が存在しているところを見ると、経営革新に取り組むことはそう簡単ではないのかもしれない。そうだとすると、そこには何らかの理由があるはずであるが、なかなかその原因を特定するのも難しい。
 ただ、確実に言えることは、現状の衰退の原因と程度についての認識が甘かったということである。一度成功体験をした企業はこうした傾向が強く、売上や利益が減少しても、その原因は景気の循環などの一時的現象であると考え、戦略を変更しようとしない。場合によっては、自社のビジネスモデルが陳腐化しつつあることを認めたがらないこともある。
 いよいよ企業が存続できないくらいの水準に落ち込むと重い腰を上げることになるが、その時は、これまでの戦略が市場や顧客に通じなくなった原因を点検する余裕もなくなってしまうためか、成長分野にのみ目が向いてしまう。その時は、新規事業の推進に適した人材も育っていないうえ、資金の調達にも苦慮することも多くなることも想像に難くない。
 絶えざる経営革新が企業の使命であるとすれば、経営理念と目指すべき目標をつなぐ戦略を常に点検しておくことかが不可欠である。衰退の一途をたどっている企業は、自社の収益構造さえもまともに把握しきれていない場合もあり、こうした状況を置去りにしたまま、新しい事業に邁進するのは危険であるはずなのに何故か目先のことしか目に入らない。
 例えば、売り上げを上げることが結果的に利益を上げることになるという方針で突き進んできた企業は、「売上が増えれば、限界利益が増え、これが営業利益の源泉になる」という共通認識の上に全ての経営方針が定められていたというような場合は珍しくない。しかし、限界利益率と営業利益率の間には、あまり相関関係が認められないことも珍しくない。
 このように半ば乱暴ともいえる費用の支出を長年に亘って続けていながら、そのメカニズムも解明されないまま、ブルーオーシャンに向かって漕ぎ出したとしても、辿り着いた途端に赤い血で染まることになる。何故ならば、自分(自社)の戦略の誤りを正さないままでは、新しい市場や顧客にも拒絶されるであろうことは想像するに難くないからである。