中小企業経営革新支援法の革新類型

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 日本の中小企業経営革新支援法では、経営革新の類型が次のように規定されている。1)新商品の開発又は生産、2)新サービスの開発又は提供、3)商品の新たな生産又は販売方法の導入、4)サービスの新たな提供方法の導入、5)上記の組み合わせ、その他新しい知恵の工夫となっている。ここで「新」「新たな」とは個々の中小企業にとって新しい取り組みでる。
 中小企業が産業の太宗を占める日本特有の事情を考えれば、法律によって手厚い支援策を講じるのは当然のこととしても、企業がもともと持っている革新機能を引き出すための支援策としては、些か過剰なようにも思えるが、そこは目をつぶるとしても、あまりにも量産を期待するのは、企業の製品開発と同じで粗悪な経営革新を認定することに繋がる。
 開業率が廃業率を下回っている現状を危惧するあまり、新規創業ばかりではなく、既存の企業に活力を取り戻させることで、デフレ脱却を目指す国としては、是か非でも景気刺激策を講じ、雇用の増加を図りたいという狙いは的を射ているとしても、経営革新を推進する企業側の意図とはかなりずれている感じで、少なくとも質的な効果は上がっていない。
 というのは、本質的には経営革新を志向しているものの、現実としては、資金調達の手段として位置づけられている傾向が強いからである。すなわち、売り上げや利益が減少し始めると、当然資金繰りがタイトになり、これを早期に回復させることが喫緊の課題となっている企業にとって、経営革新計画の認定はその解決手段として狙われることが多い。
 経営革新は、新しいビジネスモデルの開発でもあるわけであるから、新しい事業を立ち上げるために必要な資金などを支援するという趣旨であるはずだが、企業の側では、運転資金の調達手段として活用している。こうした歪んだ活用の仕方では、本来の経営革新に結び付くはずもなく、認定後1年足らずで革新計画が頓挫してしまうことも珍しくはない。
 経営革新に限らず、全ての事業計画は、経営者ないし創業者の熱い思いによって支えられているものであり、経営計画書を策定する支援者の技量を評価するものではない。もちろん、他人に訴えかける力は必要ではあるが、決して主客転倒してはならないはずのものである。この点を肝に銘じなければ、結果として経営資源を枯渇させてしまう虞がある。