失われた20年という言葉がるが、30年近く鳴かず飛ばずの経営に甘んじてきた中小企業は少なくない。こうした企業に共通する特徴は、売上高は伸び悩んでいるものの、人件費の伸びも抑えられているため、一定の付加価値生産性を維持しているため、かろうじて経常利益を出し続けている程度であるが、内部留保はかなり上積みされた状態になっている。
しかし、その背後には人件費の圧縮があり、給与水準はここ10年間ほとんど変化がない企業も珍しくない。10年前は従業員の平均年齢も比較的低かったので、昇給の停止と雇用の維持の選択を迫られた従業員は、とりあえず雇用の維持を優先してしまったが、バブルの後遺症から脱することができなかった企業は、その後もこうした状態を継続してきた。
この10年間の推移をみると、賃金水準の低さが経常利益の確保を支えてきたことが明白であり、近年は従業員のモラール低下の一因となっているものとみられるが、経営陣は、相変わらずぬるま湯につかりきっていて、とりあえず、経常利益を計上しているのだから、わが社はまだましな方だ、などと自我自賛し、従業員の心情を慮る姿勢を示そうとしない。
当然、顧客が求めている価値を追及したり、優先事項が変化していることを探究する能力も育たないので、キャリア形成もままならない。果たせるかな、不満を募らせた従業員と能力不足を嘆く経営者はお互いに、現状を打開できない原因を対岸に求め、その責任が社内の体質にあることを他人事のように嘆きながら、お互いの正当性を主張しあっている。
市場の変化が急激な場合は、ショックは大きいが、対応策を講じなければ生き残れないという危機感から、結果はともかくとして何らかの経営革新に舵を切ることになるが、市場が比較的安定している業界の場合は、内向きの対応策で何とか乗り切ろうとする傾向がある。このような怠慢な経営が、必要な費用まで圧縮してしまい結果的に資源を浪費する。
はじめはぬるま湯であったものが、ただの水にまで冷え込んでも、誰かが号令をかけるまでは飛び出そうとしない体質に変わってしまっているのである。ようやく動き出そうとしても、目先の利益を優先した設備投資に目が向き、抜本的な改革案を打ち出すことができない。それは、顧客の変化を知るという経営の基本を疎かにしてきたツケなのである。
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