売上高対総利益率と売上高対営業利益率が負の相関関係にあり、しかもP検定の結果から有意なものとは判定されないということに対しては納得しがたいところである。一方、売上高対営業利益率と売上高対経常利益率の相関係数は0.902で、有意であるこというのは直観的にも頷ける。つまり、売上高対総利益率は他の利益率とは異質なもののようだ。
売上高対総利益率の性質を確かめるために、売上高対総利益率と販売・管理費の相関係数を見てみると、0.836であり、かつ、売上高対総利益率と売上高対人件費比率の相関係数は0.873となっていることから、販売・管理費の中に含まれている人件費の支出が総利益率を高めるのに必要な反面、営業利益率を引き下げる要因として作用していることが解る。
こうした状況をもとに一つの仮説を立てるとすれば、売上を増やすには人材の投入が不可欠であり、総利益率を高めるためには、原材料の調達や製造コストの低減などが求められるため、人件費の支出は避けられないが、結果として販売・管理費が増加してしまうことになり、営業利益率を引き下げてしまうというトレードオフの関係が透けて見えてくる。
こうした仮説が真実かどうかは、他の分析も併用して判断しなければならないが、同一業界において、経営成績が良好な企業群は、総利益率対営業利益率、経常利益率が高いという特徴を見ると、少なくとも、人材の質とこれを支える育成システムの充実度と比例しているように思われるが、その充実度は成果から逆算して測定してみるしか方法はない。
こうしたメカニズムを解明できたとしても、直ちに抜本的な改善策を打ち出せるわけではないが、このように研ぎ澄まされた仮説思考でアプローチしてみることで、検証してみる手立ては必ず見つかるはずである。例えは、従業員1人当たり売上高、付加価値生産性、教育訓練費の支出実績などを同業他社と比較してみることで、自社のレベルを確かめる。
自社のビジネスモデルがほころびてきたことを検証せず、ただ闇雲にシェアの拡大戦略を打ち出しただけでは、限りある経営資源を枯渇させてしまう。また、費用を一律に圧縮するだけでも、目標とする利益を獲得することはできない。収益と費用の構造をまず把握し、効果と効率のバランスを考慮した戦略を打ち立てるというシステムにすべきである。
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