自社の収益構造の見極め

 企業の収益性のよしあしを判断するためには、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を見れば一目瞭然である。しかし、ここから抽出される経営指標から、その企業の収益構造を的確に把握し、経営者が納得する経営改善案を提言するのはかなり勇気がいる。表面的で安易な提言をすると直ちに経営者の反論にあい、こちらの頼りなさを露呈してしまう。 
 しかしながら、財務諸表に表れている数値は、目標達成に向かって経営活動を展開した結果の反映であるから、その中に経営改善のヒントが隠されていることも事実なので、その手がかりを掴むために、財務分析に取り組むことになるわけであるが、財務諸表の形式は、業界平均と比較するには便利だが、自社の経営戦略を見直すためには向いていない。
 その理由は、現在の財務諸表は、経営戦略の妥当性を判断するためではなく、どれだけの経営資源を投下し、どれだけの収益を上げることができたかを評価するためのもので、株主や金融機関、自治体などに経営の成果を報告することを目的としたものであるからである。つまり、経営をコントロールするための意思決定をメインに据えたものではない。
 例えば、損益計算書の構造を見ると、売上高を実現するために必要な費用を原価と販売管理費に分けて表示する構造になっているが、経営改善の方向を探るためには、全ての費用を変動費と固定費に分解してみなければならないが、実際には固定費と変動費が混在していることが多く、独自の工夫により費用同士の相関関係を明らかにしなければならない。
 ある企業の財務分析を行ったところ、売上高と総利益率の相関係数はマイナス0.7でだれでも納得できるものであったが、総利益率と営業利益率、経常利益率の相関係数はいずれもマイナスであった。さすがに、営業利益率と経常利益率の相関係数は0.9と高かったか、総利益率と経常利益率の関係には、経営者や幹部も納得がいかなかったようである。
 経営者にしてみれば、売上高総利益率を高めることが、結果的に営業利益や経常利益を高めることになると信じ込んでいたからである。この構造を改めて眺めてみたところ、総利益率を高めるために、販売管理費を過大に投入していたことが解ったわけである。こうした構造を解明してみることも、収益力を高めるための体制づくりには必要なのである。