学習と成長の視点の考え方

 企業の成長を左右するのは人材の育ち方次第であるといっても過言ではないが、学習と成長の視点から業績を評価するとなるとかなり難しい。特に、定性的な要素を評価するのは難しく、社内研修参加人数や有資格者増加数、特許出願数といった定量的な評価で代替している企業も多いため、人材の成長と業績の向上の間の因果関係は正確に捉えにくい。
 日本の伝統的な教育・訓練手法であるOJTは、元々教育の過程を定量的に測る仕組みがなかったこともその原因の一つであるかもしれないが、学習をすることにより能力が向上したことが成果をもたらしたというより、能力を発揮することにより成果がもたらされたという考え方が強かったため、成果を上げたものが有能あると評価する傾向があった。
 こうした考え方は、会社の業績を測るためには便利である。つまり、「能力のあるものが成果を上げるのではなく、成果を上げたものが、能力があるものだ」と評価することに合理性を求めていたわけである。スポーツの世界などでは、どちらが強いかが常に問われているので、どれだけ学習したかはあまり問題とされず、結果を残すことで能力が決まる。
 こうした評価方法は、かなり乱暴なようにも見えるが、結果を出すことが評価を高めることだという前提条件が確立されるので、結果を出すためには学習することが不可欠であると感じているものにとっては、大きな動機づけ要因となるという意味では合理性がある。こうした考え方を発展させたのが「コンピテンシー」という発揮能力なのかもしれない。
 このように考えると、成果に結びつく能力を考えるとき、学習と成果の視点から業績評価指標をとらえるよりも、むしろ、業務プロセスの視点に分類されることが多いように思われる。しかし、スポーツの例で述べたように、純粋に学習が必要なことは事実である以上、学習の視点で成長を捉えることの重要性を軽視してはならないということに回帰する。
 さらには、報酬や処遇面の指標とも関連することは経験上からも明らかであり、チャレンジングな目標設定など、学習と成長の視点からの評価指標は隣り合わせであることは確かである。したがって、どこに分類するかを悩むより、学習と成長の視点からの業績評価指標は、周辺分野にまたがることを気にせず、人材の質を測る指標として捉えれば足りる。