業務プロセスをフローで捉える

 バランス・スコアカード導入の難しさは、4つの視点を整理してこれを具体的なアクションプランに落とし込む流れを捉えることである。しかも、4つの視点から見た業績評価指標間の因果関係を気配りしながら位置づけるという3次元の捉え方が求められるため、そのバランスを保ちながら、業務改善をデザインすることになるというところが難しい。
 こうした難しさは、部分最適の集合が必ずしも全体最適にならないという問題を生じさせてきたが、この業務プロセスを改善する抜本的な手立てが見つからなかったため、ここで生じたムダを容認せざるを得なかった。ここにメスを入れたのがバランス・スコアカードであるとも考えられ、重要成功要因や業績評価指標に着眼したのは大きな功績である。
 しかし、現実には、全ての矛盾を解決できるシステムではないため、文字通り重要と考えられる要因に着目し、社員の行動規範・思考特性を整備することで、経営戦略の進捗状況を一元的に管理する手法をとっている。つまり、輻湊する多くの要素間の因果関係のなかから、最も重要と思われる主成分を抽出し、そこにスポット当てた管理を目指している。
 バランス・スコアカードは策定してしまえば完成だが、本来の目的は、PDCAサイクルを回しながら仮説と検証を繰り返して、「経営理念」→「ビジョン」→「戦略」→「戦略目標の設定」→「「重要成功要因」→「業績評価指標」→「アクションプラン」という一連の流れに着目しつつ、4つの視点から因果関係の軽重を検証して精度を高めることにある。
 ということは、そうした本来の目的に沿った運用を繰り返していれば、必ずカードの機能が高まるということになる。したがって、導入時に完璧を期すあまり、断念することになるよりは、かなり不完全と思われるものでも、取りあえず策定して運用を開始してみることに意義がありそうである。このように考えれば業務プロセスも比較的取り組みやすい。
 例えば、現在の業務を担当業務と担当者別に整理し、その業務の流れをフローチャートで表現してみることである。こうした手順により、業務の現状が把握できれば、これをプロセス、担当者、作業時間、コストなどを作業プロセスシートに記入する。このように整理してみることで、現状の問題点が見えてきたなら、アクションプランに反映させていく。