事後検証(その2)

 付加価値分析表を作成し、付加価値が生み出されるメカニズムを検証してみると、企業により原価項目にすべきところを管理費に含めているなど、アレンジの違いにより多少は項目の違いがあるが、できるだけ同じ考え方で整理し直すと、ほぼ企業の重要成功要因が明らかになる。つまり、付加価値の構成内容を把握できれば、企業の戦略が大体読める。
 バランス・スコアカードを作成する前提として、ビジョンや戦略、戦略目標を設定し、重要成功要因を洗い出すことが求められるが、その際、簡便法として付加価値の構成要素を分析してみると、当面は自社の経営努力により統制することが困難な要素が把握できる。例えば、金利は、借入金の多寡によって規定されるので一気にこれを調整するのは難しい。
 また、減価償却費や租税公課も過去の投資の結果によるものであるから、資産の売却など踏み込んだ意思決定が伴うため、通常は相対的に付加価値生産性を高めて、構成比率の改善を目指すしかない場合も多い。こうした制約条件を考えれば、財務の視点から総資本利益(率)の改善を目指すとすれば、管理費を抑えて利益を確保するしかないことになる。
 もちろん、バランス・スコアカードが目指しているのは、こうした低次元の改善ではないのかもしれないが、現実問題としては、当面の資金繰りを最優先に考えなければならないから、財務の視点を最重要視しなければならない。そうなると、社員の稼働率を上げるため、人材力を高めて業務プロセスを改善することが当面の課題であるという結論になる。
 モラールサーベイやコーザリティ分析から得られる情報として、定番のように抽出される要素として、モラールの低下が挙げられる。こうしたところに着眼すれば、学習と成長の視点はもちろん、顧客の視点へとブレークダウンさせていくことはそれほど難しくはない。すなわち、社員のモラールと利益の相関関係を分析してみることで突破口が開ける。
 具体的には、まず付加価値分析表を策定し、次に、ロジック・ツリーにより売上高対付加価値率を算出し、構成要素ごとにツリーにプロットする。これにより、現状において、最も取り組みやすい(効果があると思われる)付加価値要素に着眼し、その要素と最終的な要素である利益との相関関係を計測することにより評価指標を選定することにしている。