重要成功要因の設定

 設定したビジョンと戦略あるいは戦略目標を達成するため、具体的な要因を抽出するのがここでの取り組みであるが、戦略目標と重要成功要因との関係は、戦略目標をまず仮設定して、これを達成するために何を重点に行うべきかという手順で重要成功要因を特定する。すると、今度はこの重要成功要因によって戦略目標が規定されるという関係にある。
 いずれにしても、戦略目標や重要成功要因の抽出に先立って行わなければならないのが市場構造の分析である。これには、業界における競争ルール(5つの競争要因)、顧客・市場のニーズの動向、政治・経済動向、法改正などが対象となる。こうしたマクロ分析を踏まえた上で、市場ポジションに目を向け、SWOT分析(強み、弱み、脅威,機会)行う。
 こうした市場構造分析と競合状況の分析から得られた事実に基づいて、市場展開において成功する要因(重要成功要因)を抽出する。この重要成功要因は、最終的に従業員人一人ひとりのビジョンと戦略に落とし込むためのものであるから、「何をすること」が成功に結びつくのかといった具体的行動の指針に翻訳できるものであることがポイントである。
 そして、その抽出作業の手順は、戦略目標を達成するために重要と思われる要因をできるだけ多く洗い出すこと、そのなかから、最も相応しいものを数個選択すること、ここで選択した要因が戦略目標を実現するための因果関係にあるかどうかを見直すこと、などである。つまり、ここでも仮説・検証のサイクルを回しながら仕上げていくことになる。
 このように、重要成功要因は、経営理念を源にビジョン、戦略というように抽象的な表現から具体的なものにブレークダウンしていき、最終的なアクションプランに繋げていく要となるものであると同時に、最終的には経営理念と矛盾するものであってはならないという位置づけにある。ということは選択しなかった要因との関係にも気配が必要となる。
 重要成功要因を抽出する際によく用いられるのはSWOT分析であるが、ここでの組み合わせによって抽出された要因は、4つの視点ごとに抽出されたものか、あるいは、強み・弱みと機会・脅威の組み合わせによって抽出されたものを4つに振り分けたのかによって、業務のプロセスや成長と学習の視点との因果関係の深さが異なるので注意が必要である。