戦略マップの作成

 戦略マップとは、財務の視点を基点として、各戦略テーマをバランス・スコアカードの各視点(顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点)に整理し、経営目標達成に向けてどのような戦略を立てるべきかを因果図として描くものである。したがって、各戦略は最終的な財務目標を達成するため、関連づけられたものであることが鉄則である。
 例えば、総資本利益率の向上と生産性の向上を財務の視点から見た戦略テーマに掲げたとすると、これを達成するためには、顧客の視点では、当然顧客満足度の向上が不可欠のものとなる。そして、顧客満足度を向上させるためには、どのように業務プロセスを改善すべきか、これを支える従業員をどのように動機づけるべきかといった関連づけである。
 こうした各テーマと戦略の間には、経営という大枠の中では何らかの関連性があることは理解できるが、現実にこれを演繹的に説明できるかといえばかなり困難である。しかし、翻って考えてみると、資金繰りの状態と売上高との関係など、やはり何らかの因果関係があるということなど、これらを因果関係で捉えることの重要性はある程度認識できる。
 これまでの業績管理ないし評価は、これらを個別に扱っていたため、もしかすると、その目的達成のためには相反する戦略や行動規範が内蔵していた可能性があるかもしれない。バランス・スコアカードの考え方は、各部門や個人の行動を一つの目標達成に向って協働するという経営の原点を見直すためにも活用でき、ビジョン・戦略策定に取り組みやすい。
 この戦略マップ作成には、大きく分けけると2つのアプローチがあるといわれている。1つは、テーマをまず先にあげてから、4つの視点に分類するという方法であり、もう1つは、ここで述べているように財務の視点から出発して演繹的に組み立てていく方法である。本来の目的からすると、やはり後者の方法が妥当であるが現実にはかなり難しい。
 私の場合は、まず過去数年間(通常は7年程度)の財務分析表をつくり、これらの指標を用いて相関分析を試みる。そして各指標のもつ意味を考えながら、その背後に潜んでいる因果関係を推定することから始める。これらの指標間の相関の強よさを拠り所にして仮説を立て、戦略マップのアウトラインを描き矛盾点を修正するという方法をとっている。