経営方針の管理

 経営方針を全体像で捉えると、まず、1)経営者が企業経営に対してもっている価値観、態度、信念、行動規範といった経営理念を明らかにする。2)次にこの経営理念を実践し、企業運営における将来像(市場におけるポジション、組織、人材育成など)を経営ビジョンとして設定する。3)そして、このビジョンを達成する方策として経営戦略を設定する。
 経営戦略を設定するには、市場の状況を始めとする政治経済、社会情勢、国際情勢、技術革新、顧客志向の変化、競合企業の動向といった外部環境とこうした外部環境の変化に適応するための自社の強み、弱みが検討される。4)一方、経営ビジョンは、売上高・シェア、売上高総利益(率)、総資本経常利益率、財務構成など、具体的数値に落とし込まれる。
 5)さらにこれらの経営目標は、中長期経営計画に纏められる。6)この中長期経営計画の単年度分として、前年度の達成状況や販売予測に基づいて、従業員数、従業員一人当たり売上高、顧客満足度、総資本回転率などが社長の方針として示される。7)この方針を受け部門方針を打ち出す。8)部門別、機能別活動計画、プロジェクト計画に落とし込まれる。
 9)そして最後は、これらの計画はさらに細分化され、個人の活動計画として社員に配賦される。この枠組みは、最終的には経営者によって方針管理という形で管理されるが、あまりにも膨大なフレームであることから、通常は担当役員などが手分けして行っているのが普通であると思われるが、人材が不足している場合は、専門家の協力を得ることもある。
 また、この方針管理を、バランス・スコアカードを活用することで代行させている企業もある。この場合は、経営企画をバランス・スコアカードで表現することが不可欠となるため、企業が目指す方向をトップダウンで下位組織や個人に伝達するという仕組みが構築されていなければならない。つまり、「経営の見える化」が不可欠であるということである。
 いずれにしても、あまり欲張り過ぎて、何もかも全てを把握しようとすれば、かえってモレが生じてしまい、重要な情報を見逃してしまう虞が生じてしまう。要は、形式にとらわれず、バランス・スコアカードを活用する場合でも、重要成功要因や評価指標(KPI)を絞り込み、全社員が一丸となって管理するマインドを醸成することが最優先である。