経営戦略策定プロセスの見える化

 経営戦略とは、経営理念を実践してビジョンを達成する筋道を表したものであるから、戦略策定時点で、自社がもっている経営資源と株主などのステークホルダーたちの目標を拠り所にしなければならない。つまり、自社の財務内容や人材などの経営資源はどの程度か、といったプロフィールを認識した上でなければ、経営戦略は策定することはできない。
 また、株主や従業員、政府、治自体、地域などがどのような価値観や目的意識を持ち、自社に対してどのような要求をしようとしているのかなどを理解しておく必要がある。すなわち、自社が追求すべき目標を設定する上で、企業が社会的存在であることを認識し、多様なステークホルダーの期待に応えるための企画が、経営戦略であるということである。
 こうした諸条件をインプットしたうえで、自社はどのような会社なのかというプロフィールを明らかにする。ここで会社のプロフィールとは、事業ドメイン(わが社の事業は何であるか)、地理的ドメイン(ローカルかグローバルか)、競争状況(競争が厳しいか、ニッチ市場か)などが主要な要素である。ここを出発点にして現状の経営資源を把握する。
 こうした状況分析が不十分な状態で、いきなりSWOT分析を行っている企業は多いが、財務やマーケティング力、人材、オペレーションの現状を資源監査などにより、経営資源の棚卸を行い、自社の強み弱みを明らかにするという手順を踏まなければならない。こうして明らかになったプロフィールをもとに内外環境要因の分析と未来の予測が行われる。
 外部要因の分析は、経済的要因や社会的要因、政治的要因、人口動態、技術革新の状況、市場における競争状況などが主なものであるが、これらが将来においてどのような変化を遂げていくのかが分析される。この段階での分析で用いられるのが、SWOT分析であるが、ともすると、この分析においてマトリックスを埋めること自体が目的化されている。
 本来は、戦略代替案の選択肢を生成することが目的であるから、単なる組み合わせは代替案にはなり得ない。こうした経営戦略策定のプロセスを明確に示すことにより、「経営を見える化」することの意義がはっきり認識できる。つまり、こうして選択された戦略であることを意識させることが、計画と実績の差異を解釈する評価軸を示唆することになる。