業務監査への活用

 経営監査ないし業務監査は、独立的かつ客観的な立場で、戦略や計画などの進捗状況を一定の基準に照らして、会社全体および部門ごとの経営効率を測定して評価し、問題があると判断すれば、事態が悪化する前に改善すべき問題を定期的かつ体系的に監査する制度で、会計監査ないし財務監査が会計に限定されるのに対して、経営全般におよぶとされる。 
 経営計画を軸として、管理会計の視点から経営戦略の実施と検証は、PDCAサイクルを回しながら、一定の分析システムによってなかば自動的に行われるが、全般戦略の下部に位置する事業戦略や機能別戦略などが複雑に絡み合っている場合、各部門の責任者の主張もあり、改善のタイミングを逸してしまう虞もあるため、業務監査の必要性は大きい。
 業務監査は、経営方針、経営計画、組織、生産、販売、資材などの諸々の業務活動にまたがって、全社を俯瞰的に監査するもので、近年はその機能の強化が求められるようになってきている。企業規模がそれほど大きくない企業でも、仕入部門と販売部門の連携がしっくりしないという問題も現実に起きていることを考えると、その必要性は高まっている。
 販売予測をもとにして、基礎予算が積み上げられた経営計画は、これ自体管理会計のツールとして機能するが、計画値と実績の差異が生じる背景は実に複雑で、最大の要因を突き止めにはかなりの分析力が求められる。しかも、その原因が戦略の転換が求められるものである場合は、経営の根幹に関わるものになるので、時間的猶予がない場合もあり得る。
 こうした場合、部門間のコンフリクトを調整するという旧来の手法では、プロフィット・ゾーンを捉え損ねてしまい、競合企業の戦略転換に追従せざるを得なくなってしまう。特に、市場シェア争いに勝つことが、経営戦略の中心課題であった時代とは異なり、利益獲得をメインにした戦略に転換を迫られている状況下では、迅速な意思決定が不可欠である。
 経営を全般的に俯瞰することにより、各部門の思惑や先入観にとらわれずに、結果から逆算するロジックにより、原因を突き止める独立した客観的な視点がなければならない。「経営の見える化」は、こうした部門横断的な視点で測定・評価する格好の対象となり得る。つまり、業務監査は管理者が行う経営管理を補完する役割としての機能を持っている。