顧客情報の見える化

 経営計画を明示し、経営の状況を「見える化」することにより、販売予測などを拠り所にして立てた戦略を実践しながら、仮説の検証を行うことで、ビジョン達成のための戦略を再構築するという流れをシステム的に捉えることを目指している。しかし、このPDCAサイクルは複合的な要因を巻き込みながら回るので、実際の検証はそう簡単ではない。
 ただ、日々もたらされる情報の中で、営業からもたらされる顧客情報は、戦略の修正に役立つものが多いものと思われる。この情報を分析して戦略の修正に活用する仕組みを小さなPDCAサイクルで捉えることができれば、自社の主要成功要因をより明確に捉えることができ、全社的経営戦略の検証精度を高めるため、速やかな軌道修正にも活用できる。 
 顧客情報は、販売実績などの点では形式知としては共有されていたが、「どうして売れているのか」「何が原因で売れないのか」といった最大の要因を共有できる状態にはなかった。これらの中核的な情報は、営業マンの心の中にしまいこまれ、いわゆる暗黙知として全社的には共有されていなかったため、顧客の求めているソリューションが特定できなかった。
 顧客ニーズは日々進化し、かつてのような品質や低価格のみが、課題解決のための主要な問題ではなくなってきている。こうした変化に目を向けずに販売会議を開けば、売れない原因を上司から問われると、営業マンは決まって「価格競争力がないから」とか「有力な競合業者が存在しているため」などという、まるで答えにならない答えが返ってくる。
 業界をバリューチェーンと捉えれば、「原料メーカー」「製造メーカー」「物流業者」「販売業者」「顧客」がその構成メンバーである。このチェーンのなかで自社はどの位置にあるかによって、重要成功要因は異なる。例えば研究開発型なのか、生産技術型か、それとも品揃え、あるいはマーケティング、販売網、サービス力など業種・業態によって異なる。
 こうした業界のKSFを踏まえた上で、さらに自社の主要成功要因を明確に位置づけるのが、戦略策定の原点である。「経営を見える化する」ことで、経営効率を高めようとするならば、日々もたらされる顧客情報を「見える化する」ことにより、顧客が求めているソリューションに応える解決策を、次々に打ち出せるビジネスモデルに改変することである。