何を「見える化」するか

 経営理念は、抽象的なものであるから、文章にしたもののコンテクストをどのように理解するかは個人によって違いがある。そのため、社長は自分の言葉で社員全員に語りかけることが必要になるわけであるが、問題は、その経営理念を実践してビジョンを達成するためのプロセス(戦略)との整合性についてもコンセンサスが得られているかどうかだ。
業績が好調で、円満な発展を遂げてきた企業の場合は、それなりに人材も育ってきているだろうから、戦略の策定に参加できるため、その時点から、経営理念に対する認識も共有されているので、一定の思考様式により仮説としての戦略も、比較的精度の高い販売予測に基づいて策定されるから、戦略策定システム自体がすでに「見える化」されている。
しかし、多くの中小企業では、経営計画自体が策定されていないという実態を考えると、参加型のシステムに移行する前提として、まず、トップダウンの経営戦略を多少は納得がいかない面があったとしても、取りあえず、社員に公開することが必要である。すなわち、個人の目標設定や自己評価の目安として、納得のいく戦略目標を示さなければならない。
最小限度、ここまでのプロセスを「見える化」することで、協働システムとしてのPDCAサイクルが始めて回り出す。このサイクルが回っている様子をチェックできれば、これは、仮説・検証システムとして機能し始めるので、戦略的思考法も自然に身に着くことになり、経営計画策定の必要性にも気づくという好ましい循環が生まれることに繋がる。
厳しい市場環境におかれながら、高業績を上げている中小企業の中には、経営計画をトップダウン方式ではあるが毎年策定し、社員ばかりではなく、取引金融機関などにも公開しているところもある。しかし、こうした開かれた企業は、残念ながら全体の1割程度といわれているところを見ると、経営計画の策定と社員への公開も中々進めにくいようだ。
経営を「見える化」する第一の目的は、会社の方針と社員個人の目標が同じベクトル上にあること確認することにある。これを実現するために必要不可欠なのは、経営計画の持つ意味を正しく理解することである。長年ブラインドになっていたためか、社員もあまり積極的にこの中身を知ろうとしない傾向があるなど、一筋縄ではいかない面も窺われる。