リーダー開発の基本原則

 リーダー開発のフレームがモレやムダがないシステムであるとしても、そのシステムを期待通りに機能させるためには、経営者の理念が込められていなければならない。中小企業などでよく見かけるのは、制度としての形は整っているものの、実際の運用は旧態依然としたものであるため、改革は遅々として進まず実態は棚上げになっている状態である。
 特に注意しなければならないのは、旧来の年功序列型が脈々と生き続け、改革を叫ぶ掛け声とは裏腹に、優秀なリーダー候補が育ちにくい状況に置かれていることである。給与体系は属人給から仕事給に改定されて久しいのに、実際には年功序列を引きずっているというのでは、リーダーの資質を持っている人材でも能力を発揮する機会が巡ってこない。
 こうした企業文化が根づいてしまうと、若いうちに困難な問題に遭遇した時も、自己責任で立ち向かうという行動特性が身についていないため、場合によっては、それが免罪符のよう機能し、達成できなかった理由にしてしまう場合もある。リーダー候補には、敢えて困難な試練を与え、それに立ち向かう行動特性を身につけさせることが必要である。
 そのためには、少なくとも初期の段階では、失敗もあり得るという見守りも必要である。つまり、敗者復活のチャンスを用意しておくことが、チャレンジ精神を醸成することに繋がる。また、その裏返しとして、一度成果を上げたことですべてを評価せず、継続して取り組む姿勢も評価し、その成果が本物かどうかを見極めるルールも確立しておくべきだ。
 そして、何よりも大切なことは、リーダー開発の仕組みを経営者のリーダーシップによって運用していくことである。経営者自身が自らコミットメントすることにより、理念やビジョンがリーダー候補にも伝わり、目標達成に対する意欲も高まることになる。リーダー候補に限らず、人は誰でも自分の行動がどう評価されているかに大きな関心がある。
 最後に、仕事の成果とは何かという評価軸を明確に定めておくことである。例えば、部門の業績目標、個人が達成すべき利益目標、達成プロセス、達成するために必要な能力とレベル、取組姿勢などを構成要素としたものである。こうした基本ルールに護られていることを実感出来る仕組みになっていなければ、リーダー開発を成功させることは難しい。