プロフェッショナル育成モデル

 現代企業では、「経営のプロ」と言われる人材が不可欠になってきている。経営のプロには2つのタイプがあり、一つは組織に変化を引き起こす「変革者型」リーダーで、もう一つは新しい事業を創出する「起業家型」のリーダーである。いずれのリーダーにも共通しているのは、環境の変化に対して敏感に反応し、組織を動かしていく卓越した能力である。
 多くの企業では、次代を担う人材を育成することに取り組んできたことは事実であり、経営者の最大の任務は後継者を育てることであるとも言われてきた。しかし、この手法は、採用の段階から幹部候補生を区別して、企業風土や経営管理手法を習得させるという「英才型教育」が主流であったため、管理型、調整型のリーダーの育成には最適であった。
 しかし、この方法では、時代の変化を敏感に感じ取り、より革新的なマネジメントを指向する「経営のプロ」を育てるには不向きであった。今求められているのは、「経営のプロ」であり、管理型のマネジメントではないことは明らかである。時代の要請に応えるためには、経営のプロを発掘し育てる、新しいリーダー開発モデルを構築することが望まれる。
 ここで発掘型の人材育成モデルとは一体どういうものなのだろうかといことになるが、それは、「発掘」→「教育」→「実践」→「選抜」というサイクルをメインに打ち出した、戦略的な育成プログラムを充実させることである。すなわち、リーダー育成を経営戦略遂行に相応しいリーダーを意図的に育成していくというプロクラムを開発することである。
 具体的には、職能資格制度や職務グレード制度、職務グループ制度の「処遇制度」を中核に据え、年俸制、ストックオクションなどの「報酬制度」、人材アセスメント、自己申告制度、選抜型研修制度といった「人材開発制度」、社内FA制度、早期退職優遇制度、自己選択型退職金制度などの「人事サブシステム」、「各種評価制度」などのトータル制度である。
 当然、制度だけを充実させても、これらの制度が有機的にリンクして、戦略的に運用されていなければ、目指すべきリーダー育成には繋がらない。トータル人事制度という意味では従来型のシステムと似ている面もあるが、どのような目的でリーダーを育てるかという理念的な面では大きな違いがあり、選択より発掘を先行させているところが肝である。