プロフェッショナルの条件

 プロフェッショナルとスペシャリストとは明らかに異なった概念である。これまでの帰属社会から契約社会へと移行するにあたって、経営者も個人も留意しなければならないことは、双方が対等の立場で誘因と貢献のバランスについて合意し、役務の提供(サービス)という商品を提示して、対等な立場で双務契約を締結するという認識をすることである。
 契約社会では、雇用関係は上限関係ではなくなるから、個人はプロフェッショナルであることを強力に売り込むことが常態となる。この場合のプロフェッショナルとは、自分を客観的に評価することができことが絶対条件である。つまり、自分の強み弱みを客観的に認識した上で、弱みの部分は他者にアウトソーシングできるぐらいの器量が求められる。
 次には、前述のように、自分を売買の対象(契約の当事者)として捉えることのできる人であることも必須の条件である。もちろん、契約社会といっても、労働基準法を始めとする法律によって、労働者の立場が擁護されることは当面継続されるとは思われるが、こうした政治や法律に依存した考え方に固執していては、労働市場から排除されかねない。
 社員は経営者ではないが事業者であれといわれてきたが、契約社会では、社員は正しく経営の当事者としての責任を果たさなければならないから、当事者意識や経営感覚を持たなければならない。これまでのように、上司の命令に忠実であることが全てであった時代とは異なり、経営理念・ビジョン・戦略を経営者と共有する感覚を持たなければならない。
 そして、特に重要なことは、情報感度の高い人であることである。高度情報化社会と言われる現代では、情報収集・蓄積・加工・分析は当然のことであるが、これをタイムリーに取捨選択できなければ、マネジメントには役立てられない。ここでいう情報感度とは、ITによる情報に止まらず、ヒューマンネットワーキングの重要性も含めたものである。
 契約社会では、個人と企業との契約によって労働契約が成立するわけであるから、会社が必要としている能力と自己の保有している能力との相性が決め手となるはずである。ということは、自分の能力をより解りやすく相手(経営者)に伝えるという能力も問われることになる。すなわち、自己表現能力に研きをかけておくことも重要な要件の一つである。