信頼関係を構築するには

 ビジョン、バリュー経営を実現するためには、社員が主役であることを経営者も社員も自覚していることが前提であるが、そうした状況を作り出すためには、経営者が打ち出したビジョンを社員が受け入れる下地をつくらなければならない。ビジョンが共有されていなければ、経営陣に対する不信感が残り、旧来型のマネジメントと何等変わりない。
 経営陣もそのことにはとっくに気がついてはいるが、いざとなると、両者が歩み寄るのはかなり難しいようである。例えば、経営陣に言わせれば、「結局は社員がやる気を出すことだ」といい、社員は、「経営陣は相変わらず我々の提言に耳を貸そうとしない」という。こうして、お互いの視座からしか物事を見ようとしなければバリュー経営は実現できない。
 こうした状況から脱するためには、経営陣の方から社員の側に歩み寄る姿勢を示さなければならない。経営陣に対してこのように提言すると、人によっては烈火のごとく怒り出し、「何故、経営者の方から社員に対して歩み寄らなければならないのか」と声高にいう人もいる。しかし、「何を目的に歩み寄るのか」を考えれば自ずから答えは出せるはずである。
 つまり、こうした膠着状態を放置することによって生じる最大の被害者は誰なのかということである。社員の自己実現意欲を削ぐことも大きな損失ではあるが、そのことによって、ビジョン、バリュー経営が実現できなければ、企業として存続できないかもしれないという危機感もっているのであれば、小さなメンツにこだわっている時ではないはずだ。
 ここはひとつ、お互いに胸襟を開き、ビジョン、バリュー経営の取り組みに対する意義を熱く語り、社員にとってもやりがいのある仕事であることを伝えるべきである。場合によっては、ビジョン作りに直接参画させることも視野に入れるべきである。また、ビジョン達成度により、新たな報奨を用意しておいことを明らかにすることも有効である。
 ビジョン、バリュー経営を実現するためには、社員の士気を高めて、組織を活性化させることにつなげることである。これには、経営陣と社員間に横たわっているお互いのわだかまりを取り除き、社員の創意工夫により顧客満足度を向上させ、ビジョンの実現に対して手応えを実感させるという良好な循環をつくることにあり、その基礎は信頼関係である。