ミッション、ビジョン、バリューの関係はこれまで何度も触れてきたが、ここでもう一度確認しておくと、「ミッション」とは、どういう経営を志向するかという経営理念や価値観を意味するもので、具体的には市場や顧客に対してどのような活動を実践し、安心と信頼を感じてもらおうとしているのかを約束として打ち出すもので、使命とも呼ばれている。
この活動を通じて、具体的に何を達成したいのか、またはどんな状態に到達することが目的なのかを表したものが「ビジョン」である。「バリュー」はビジョンを実現する上での従業員の行動規範を示す価値基準である。こうして設定された枠組みに沿って実践されるビジョン・バリュー経営の担い手は他ならぬ社員であるから、社員の士気向上が鍵となる。
社員の士気が高まれば、提示されたビジョンを実現するために社員はそれぞれ創意工夫を凝らし、顧客満足度の向上を目指すことになるため、リピーターが増加するとともに新規顧客の獲得も促進される。その結果、当然会社の財務目標の達成可能性が向上するので、報酬の増加という形でも従業員に報いることができるというサイクルが回り始める。
こうした好循環構造が構築されると、ビジョンの実現に向けて更なる努力をするようになる。そこでは、報酬の増加といった外発的な動機づけだけでは不十分で、顧客の求めているソリューションにどれだけ貢献できたかという評価軸が個々の社員の中で形成され、それが内発的な動機へと変わっていく。組織の役割はこの第一歩を後押しすることにある。
それには、まず、会社が打ち出したミッション、ビジョン、バリューをより具体的に示すことで、社員との信頼関係を構築することから始めなければならない。その信頼関係に基づいて、ある程度の試練を与え危機感を醸成する。信頼関係に支えられていれば、自分の裁量によりチャレンジして、小さな成功体験をつくるチャンスであることを実感する。
こうした取り組みにより成功した企業としてはナイキやスターバックス・コーヒーなどがあげられるが、共通しているのは、上司の細かい指示により社員の創造力を抑圧することなく、あくまでも自主的な行動を促しつつも、ミッション、ビジョン、バリューにそった行動規範が常に共有されているため、組織の求心力として機能していることである。
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