キャリアアドバイザーの活用

 旧来型の人材育成スタイルであるOJTでは、環境変化に対応したキャリア形成は困難になってきている。キャリア形成において、いわゆる出世は一つの目標あるいは通過点としての意味はあるものの、本来自分が目標としているキャリアとは似ても似つかぬものであることもしばしばある。それでも自分の仕事ぶりが認められたことで妥協してしまう。
 企業の中で認められるということは、大変な努力がいることはだれしも認めていることだが、出世イコール昇進と見るならば、必ずしも常に客観的評価によって出世が実現するわけではない。とんとん拍子に出世をした人の中には、この出世は自分の努力のたまものだと自画自賛している人もあるだろうが、同僚の厳しい目を気にしている人も少なくない。
 先日も、ある中小企業から給与制度を改定したいという相談が持ち込まれた。改定が必要な理由は、職務等級とそれに応じた成果、そして給与額の間には、殆ど説明のつく関係を見出すことができなくなっており、その延長が長く続いたので、他の社員のモラルが低下しているというのである。もちろん、改定の試みは過去に何回となくあったという。
 その度に、「今の是にして、先の非なりを知る」ことにより、社内に混乱が起きることを恐れて、臭いものに蓋をしてきたというのである。しかし、この事実に気がついていないだろうと思っていたのは経営者ばかりで、社内では公然の事実であったのである。当然のことながら、企業の業績は年々低下しはじめ、有能な社員は相次いで退社していった。
 こうした状態に立ち至った企業で、給与の改定を断行するには2つの大きな問題が生じる。一つは歪んだ給与体系を正常な形に戻す場合に生じる予算措置の問題である。つまり、これまで「ひやめし」に甘んじていた有能な社員を、正当に評価して処遇を修正する場合の昇給原資を用意しなければならない。これが避けて通れない問題として立ちはだかる。
 もう一つは、新制度をどのような評価軸でデザインするかである。こうした問題が致命傷にならないようにするためには、社員の行動評価を問いかけ型のマネジメントで対応するのが望ましい。キャリアアドバイザーを配置し、カウセリングやコーチングを通じて、人材開発に繋げることができれば、評価軸を修正する場合でも社員の理解が得られやすい。