人材育成型リーダーシップ

 企業の存続・発展のためには人材育成が不可欠であることはどの経営者も認めている共通の認識である。こうした考え方で人材育成に望んできたことが、経済成長に繋がってきたことも事実である。その路線に間違いがなかったのであれば、現在も発展し続けられるはずであるが、現実にはかつてのような競争力を失いつつあるのは何故なのだろうか。
 規制緩和などが遅々として進まないなどの事情はあるものの、現在のような厳しい経営環境の下でも、次々に新しいビジネスモデルを開発し、着実に成長している企業も見受けられるところを見ると、やはり、変化を先取りして経営戦略を組みなおし、市場のニーズに対応している企業が存在しているということは、やはり人材力の差にあるように見える。
 消費者ないし生活者は、安価で良質の情報をリアルタイムで入手できるようになってから、これまでのように商品に対して、「機能的価値」を求めるのではなく、より「心理的価値」を求めるようになった。すなわち、「商品価値」よりも「ソリューション」を求めるという消費者行動ないし態度に変わったこととビジネスモデル開発とは無関係ではない。
 今日、多くの企業の懸命な企業努力にも関わらず業績が低迷しているのは、こうした顧客の求める価値に対応できないことが大きな原因であると考えられる。つまり、現場での問題解決力が伴わない企業は、自社が提案する付加価値を高く評価されなくなってきていることを意味している。このギャップがすなわち顧客離れの大きな原因の一つである。
 こうした状況を俯瞰すると、企業は相変わらず従来の価値観に基づいて人材を育成しているが、消費の現場では、ソリューションの提供を求める人材には育っていないため、提供しようとする付加価値が拒絶されてしまうという状況に陥っている。第一線で活躍するビジネスマンもこの矛盾を抱えながら、旧来のマネジメントとの狭間で葛藤している。
 自ら成長する能力や主体的に仕事をデザインする人材が求められているのに、相変わらず、指揮命令型な管理志向のマネジメントスタイルで対応していては、顧客が必要としている問題可決力のある人材を育てることはできない。一日も早く、コーチング的な問いかけスタイルのマネジメントに転換して、社員が持っている潜在力を引き出すべきである。