正社員以外の働き方に夢を

 学校教育制度は、小学校から大学まで16年間も学び続けなければならないが、小学校に入学する前にも幼稚園でも学ぶし、受験のために学習塾などにも通う。勉強の嫌いな人や学校という場に馴染めない人、友達との交流がうまく出来なくて、学ぶことが苦痛に感じる人もいるかもしれないが、それでも何らかの形で学習しようという志は持ち続けている。
 こうした志は、将来に対する希望に支えられているからであり、学習することと、それによって達成できる将来像を比較考量して、学び方の質量を決めているわけである。もちろん、このような期待理論的な考え方が全ての人に当てはまるとは限らないが、かなりの説明力はあるように思われる。つまり、向上心が学び方を決める原点であるということだ。
 ところがこれまでの企業は、人材育成の対象をほぼ正社員に限定してきたため、アルバイトやパートは使い捨てで、人材育成の対象とはしてこなかった。すなわち、アルバイトやパートの学ぼうとする志を無視した対応だったのである。その結果がキャリア形成にも大きく影響し、人材不足と生活保障といった外部不経済を顕在化させてきたことになる。
 多くの企業はこのことに気づいてはいるものの、自ら先頭にたってまで、社会的関係資本の増強を図ることを嫌い、業界やリーダー企業が立ち上がればそれに追従するという構えであるように見える。特に中小企業ではこうした消極的な経営者が多く、人材育成のための投資をためらっているが、それが更なる人材不足を生んでいることを認めない。
 非正規社員を使い捨て要員と位置づけるのではなく、正社員の予備軍であるという姿勢を打ち出し、社内研修を受ける機会を提供すれば、正社員として採用されることを希望しているものはもちろん、他の企業に就職することを望んでいるものにとっても、キャリア形成の機会が拡大されるので歓迎されるし、労働市場にも良質の人材がストックされる。
 このように企業がオープンスタンスで臨むことを宣言すれば、非正規社員を募集する場合でも、自社の経営理念に賛同する人の応募に結びつくので、会社が求めている人材とキャリア形成に有効であるとする希望者のベクトルが一致する可能性が高まる。個人の成長と人材活用が有機的に結合してこそ、企業の成長も可能になることは普遍の原理である。