教育ニーズ探索(その2)

 人材育成のためにはどのような教育をすべきか、というのが教育ニーズを探索する目的であるわけであるから、会社としては、社員の能力を経営戦略や経営計画遂行に必要なレベルに引き上げるためにはどんな教育をすべきかが課題である。一方、社員にとっては、会社が望む人材に育つことだけではなく、自分のキャリア形成に関わる問題でもある。
 すなわち、教育ニーズと一口に言っても、会社が考える教育ニーズと社員が望んでいるキャリア形成に沿った教育ニーズには、微妙な違いがあると考えるべきである。お互いに目指しているベクトルが異なれば、同じ質量の教育をしても、その評価は立場によって違ったものになるから、会社と社員個人の目指すべきベクトルを合わせなければならない。
 ところが、会社は柔軟で一般的に優秀と称される人材を求めているのに対して、社員は、会社に雇用されているというよりも、会社と労働契約を対等な立場で結んでいると考えているとしてもこれを間違いだと決めつけるわけにはいかない。このように呉越同舟とまでは言えないまでも、両者のベクトルが一致していないことを前提にして考えざるを得ない。
 こうした現実に目を背けるのではなく、むしろ、会社が求める人材と社員が望んでいるキャリア形成ニーズをパッケージにしたものを人材育成のためのニーズと位置づけた方が合理的であり現実的である。つまり、会社のニーズと社員のニーズを洗い出すことが、具体的な教育ニーズを把握するためには必要ということになるという考え方である。
 こうした考え方は、理論的には理解できるとしても、利益を追求することが使命である企業にとっては、かなりの負担となるというイメージが強く、純粋に社員のキャリア形成に力点を置いた教育訓練プログラムを設定している企業はごく限られている。ただし、両者は協働関係にあるとも事実である以上、共通のベクトルを探るメリットは確かにある。
 その場合の教育ニーズとしては、トップマネジメントの期待、経営戦略への対応力、予算や教育管理面での制約条件などが、会社のニーズである。そして、研修参加者の要望(意見)、管理・監督者の問題意識、部門ごとの要請、階層別の要請、社員個人の教育ニーズなどである。こうしたニーズを掘り起こしていくことが、現実的対応ということになろう。