OJTや集合研修にしても、社員本人の自己啓発意欲を引き出すことが目的である。もちろん、それは会社の目的を達成するために立てられた、経営戦略を遂行するための人材を育成するという、仕事を中心としたものであるから、社員個人の価値観や人生観などの違いにより、教育効果が一定である保証はなく、場合によっては逆に作用することもある。
企業は社員を採用する場合、学歴や入社試験、面接などにより、会社が必要としている人材に育つ可能性を考慮して採用する。しかし、入社後数年で退職してしまうという現象は、労働市場の状況や景気などの外的要因によって増減するとしても、社員の満足度の増減によるものではないように思われる。つまり、需給のミスマッチの問題である。
労働市場関係は、給与などの処遇面ばかりではなく、本音でいえば対立関係にあるわけであるから、売り手市場にある場合は企業が妥協することになるし、今日のような買い手市場の状況になれば、労働者側が理想を押し殺して採用されることを優先せざるを得ない。こうした取り合わせの中では、紋切り型の研修だけでは自己啓発意欲を引き出せない。
すなわち、人材育成プログラムを設計する以前に、どのような人材を求めているのかを目に見える形で示さなければ、こうしたミスマッチは減少しない。いわば教育訓練は必修科目であり、ここで身についた能力と自己啓発との関連性は極めて薄いことを認めていながら、人材が育たないことや職場に活力がないことを嘆いているのは不思議である。
ある企業では、新入社員を採用するとき、入社試験と面接を併用しているが、入社後に追跡調査をしたところ、試験の成績よりも面接の評価との関連の方が遥かに高いことが確認されたといっている。学校の入学試験とは異なり、会社が望んでいる戦力に育つかどうかという判断は、やはり、全人格が表に出る面接の方が確実ということの実例である。
教育ニーズを把握するためには、先ず、会社との相性を確認することが大事である。この第一歩が間違っていると、企業にとって望ましい人材に育てにくくなるだろうし、教育訓練関連費用のコストもかさむことになる。一方の社員にとっても、会社が用意した研修では自己啓発意欲を刺激することはできないので、最終的には退職につながることになる。
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