原点は経営理念にある

 人材の育成計画といえば、すぐ頭に浮かぶのはOJTやOFFJT、自己啓発などである。これらの教育訓練技法は現在でも基本であることは確かであるが、それがどれだけの効果をもたらしてきたかと考えると、費用対効果の面からいっても、それほど高くは評価できないと思っている経営者も多いように思われるのは何故なのだろうか。
 もちろん、全く効果がないと思っている経営者はいないと思うが、実際に教育訓練計画を体系的に作り、実施している中小企業はそれほど多くはないところを見るにつけ、やはり、直接販売促進につながるイベント開催などと比べると、どうしても優先順位が低くなるようである。こうした状況を本当にやむを得ないと考えているかどうかは別である。
 経営環境が目まぐるしく変化する中においては、目先の会社運営に目がいくのは、しかたのないことであり、他人が批判すべきことではないかも知れないが、本当は、人材育成に力を注いでこなかったことが、現状に繋がっているということは、程度の差こそあれどの経営者も同じように認識しているはずであるが、現実にはなかなか軌道修正できない。
 食べながら走り、走りながら次に食べることを考える。それが身体にはよくないと思っていても、その行動が緊急避難に当たると判断すれば、他の選択肢を選ぶいとまがないのは当然である。こうした心の葛藤は誰にでも心当たりがあるはずだが、このように切羽詰まった状況にあるかどうかを判断するのも経営者自身に課せられている責任である。
 経営を維持・発展させることが経営者の使命であるとすれば、人生の大半をすごす会社での生活は、従業員にとって自己研鑽の場である。企業が存続する価値があるかどうかを判断するのは経営者ではなく、顧客やこれに影響を受ける社会である。社会は人の集まりであり、従業員はその中核に位置する存在であることを重く受け止めなければならない。
 企業が社会的に存在する意義あるということは、何よりも「人を育成する使命」を果たすことに他ならない。そこのところの基本の立ち位置が違っていると、「会社が存続できなければ、人材育成はできない」という方向に大きくぶれてしまうことになる。そして、そのぶれが、会社設立当初の理念と矛盾していることも忘れてしまうようになる。