販売管理者積上法

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 販売管理者積上法も草の根法と同様に、直接販売に関わっている専門家の勘と経験に重点を置いた予測方法である。本部の販売責任者に上げられるまでの時間は草の根法より短いことになるが、この方法が採用される理由はそれだけではないようだ。営業員の予測の信頼性が乏しいと判断される場合には、無益な修正を繰り返すより妥当な判断ができる。
 なるほど、販売管理者は、日々営業員から上がってくる売上高を把握できるという立場にあるから、敢えて営業員に予測させるよりも、関連部門からの情報も加味して直接予測する方が合理的であるように見える。しかし、第一線の営業員は直接顧客と接しているわけであるから、営業員が持っている暗黙知は正確に管理者に伝わらない面もあるはずだ。
 こうしたメリットとデメリットがあるため、複数の予測方法を併用することになるわけであるが、販売管理者が直接行うことの真の意義は別にある。それは、他でもないサプライチェーンの考え方の徹底である。多くの企業では、仕入れ部門と販売部門が独立して存在しているため、販売部門は顧客を、そして仕入れ部門は仕入先に顔が向いている。
 サプライチェーンとは、文字通り、最終の顧客に付加価値(バリュー)を提供するための供給体制であるから、顧客に満足を提供するためには、バックヤードとしての供給体制が整っていることが売上高に繋がっているはずだ。ところが、販売部門は顧客の顔色は窺うものの、ベストな供給体制についてはあまり意を用いない傾向があるようだ。
 具体的にいうと、顧客に製品やサービスを提供することが販売部門の役割であるとすれば、製品やサービスを造り上げるための原材料や部品などの供給先との関係も重視しなければならない。つまり、販売部門といえども、顧客ばかりではなく供給先にも気配りをする必要がある。こうした関係を強化するというのがサプライチェーンマネジメントである。
 顧客第一主義などといったスローガンを掲げている企業は多いが、自社が供給先からどのようにみられているかにはあまり興味を示さない。こうした姿勢は、顧客満足を高めるためには不十分であるといわざるを得ない。販売管理者が予測を行う場合の最大のメリットは、サプライチェーンマネジメントを意識して予測を行う立場にあるということである。