草の根法

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 販売管理者積上法と草の根法の違いは、形式的には販売員が予測に参加するかどうかだけであるが、実際には販売予測に大きな違いが生じることがある。その理由は、経営計画策定との関係でいうと、販売予測の結果はそのまま基礎予算となる可能性が高いことにある。つまり、販売員自ら予測した結果が、自分の販売目標となる可能性が高いからである。
 こうした理由から、販売の予測はあまり信頼できないのではないかと見られることもある。これは、営業員は自分の販売目標が高く設定されることを避けたいという思いから、販売予測を敢えて内輪に見積ってしまうといううがった見方があることを指摘しているものであるが、それ以外にも目先の状況にとらわれ過ぎるのではないかという懸念もある。
 こうした欠点が指摘される草の根法をどのようにして補正するかが思案のしどころであり、様々な工夫が試みられている。まず、第一に考えなければならない対策は、基礎となる予測の信頼性を高めるため、予測に役立つ基本情報を積極的に提供し、営業員の恣意的判断や偏見を抑え込むことである。つまり、ある程度のガイドラインを示すことである。
 第二には、営業員の予測を鵜呑みにするのではなく、管理者が多角的に検討し、修正を施すことで合理的な予測結果を導き出すことである。しかし、こうした修正があまり強過ぎると、営業員のモラル低下にも繋がる虞もあるので注意が必要であることから、営業員が日頃入手することが困難な社会情勢や法改正といった資料を提供するのも一案である。
 また、前期の実績と予測の比較データを提供したり、広告宣伝費やプロモーション予算といったマーケティング予算との関係などに関する資料を示すのも有効と考えられる。いずれにしても管理者が販売員の予測を批判したり、意見をいったりすることは逆効果であるから、疑問がある場合には、質問をするという姿勢で臨まなければならない。
 それから、特に注意しなければならないのは、営業員のもっている顧客情報と対極的な見地から市場を捉えた情報のすり合わせを事前に行っておくことが重要である。すなわち、「虫の目」と「鳥の目」によって捉えられた状況から、仮説思考による予測が欠かせないということである。こうした方策を講じることにより、営業員の予測精度は向上する。