陪審法の長所と短所

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 陪審法による予測の長所は、詳細な時系列データが不足している場合でも、各方面の専門家の知識や見識が活用できるため、予測が迅速に行われることにある。こうした長所を認めているからこそ、現代でも販売予測の方法として採用されているものと思われるが、メンバーの選定や討議の進め方によって大きな歪みが生じる危険性もある。
 例えば、メンバーの一人が声高に意見を述べると、それが正論ではないと感じていても、真っ向から異論を唱えるのを避けたいと思うと、特定のメンバーの意見が全体の意見に大きく反映されてしまうといった結末を迎えることはよく経験することである。こうした議論が予測結果になり、経営計画に反映されてしまっては全く逆効果になってしまう。
 こうした欠点を防止するためには、各メンバーが単独で予測した結果を単純に集計して平均したものを予測結果とするという方法が考えられたが、これもまた、必ずしも妥当な結果が得られるとは限らない。つまり、単純平均は最多の意見を反映しているとは限らないので、両極端に意見が割れている時には、誰の予測も採用されないと同じ結果となる。
 加重平均による場合は、単純平均よりはましであるといっても、偏見が入り込む余地があるという意味では五十歩百歩であるといわざるを得ない。こうして算出された予測結果が実績と著しく乖離したものになれば、やはり、経営者の勘と経験で単独に行った方がまだましだという批判が噴出し、改善は遅々として進まないというのが現状である。
 勘と経験による予測は陪審法のみならず、多くの長所と欠点が同居している。それにもかかわらず、多くの企業では大なり小なりこの方法を活用しているのは、予測には勘と経験が不可欠であるということを経験的に実感しているからに他ならないが、そうだとすれば、勘と経験による予測の長所を生かしつつ、短所を補う方法を模索するしかない。
 予測者グループのメンバーの選任の妥当性という問題は残るにせよ、予測者の意見がよりよく反映させるためには、討議方式を採用せずに各メンバーの予測を尊重できる方式を考えるというのが的を射た考え方である。そこで登場したのがデルファイ法である。この方法にもやはり難点はあるが、販売に限らず技術革新の予測などにも活用されている。