陪審法

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 販売予測の方法として根強く残っている方法が陪審法と呼ばれる方法である。この方法は、名前はアメリカの裁判制度からきていることはよく知られているが、販売予測に適用されるとなると裁判とは違った点もある。販売予測の陪審法は、数人の管理者を選んで予測を行わせるが、実際には他の方法と組み合わせて行う場合が多いように思われる。
 この陪審法は、元々経営者が単独で行っていた販売予測を、一人の判断より数人の管理者に拡大することにより、予測の精度が高まるという仮定で採用されたもので、「三人寄れば文殊の知恵」という日本的な考え方にも合致している。この考え方によれば、メンバーの選び方も販売部門に限らず、広い領域から選ぶというのが一般的な考え方のようである。
 したがって、いざ人選するとなると結構大変で、具体的な人選基準をどのように作るかという問題もある。また、異なった見解が入り混じった予測をどのような形で集約し、メンバーの最終的な予測とするかという問題もある。つまり、もの事を決める場合に、それを決める人を誰にするかという問題が必ず孕んでいることを留意しなければならない。
 何しろ、次年度の経営計画の基礎となる販売を予測するわけであるから、人選が偏ってしまえば、販売予測は大きくぶれる可能性があるからだ。そこで、販売部門ばかりからではなく、製造、購買、財務、研究開発部門、総務部門など、あらゆる部門の管理者を対象とすることが望ましいことになる。しかし、それでもなお人選の基準は十分ではない。
 企業全体を対象として人選するとはいっても、販売予測に対する十分な見識をもっているかということを、客観的に把握することは難しい。一般的な基準は、過去の経歴や他人の評価(評判)、資料などの収集力・分析力、自己評価などは最低でもチェックする必要がある。最終的にはこれらを総合してバランス感覚に優れた人を選ぶのが無難である。
 このようなプロセスを経て選ばれたメンバーが出した予測結果が最終的に採用されたとしても、これを実行に移すのも同じメンバーであるという構図には変わりないので、総合調整の中で、大きく個性を削ぎ取られたメンバーは、結果に対して少なからず不満を抱いているということも予想しなければならないから、メンバー間の調整も簡単ではない。