診断のプロセスを活用

 プロのコンサルタントが企業の経営診断をする場合、特定の課題を事前に提示されている場合は別として、まず、企業が掲げているビジョン(あるべき姿)と現状の乖離を測定することから始める。それには、財務分析から入るのが定石であるが、財務分析をしてもあまり経営改善に繋がる情報が得られないと主張するコンサルタントもいる。
 その根拠は、売上を伸ばせば殆どの問題は解決するので、ITなどをどのように駆使して、マーケティングを展開するかに重点をおいた診断をすべきだというのである。現代のような情報化社会において成功を収めているのは、IT関連の企業が多いことは認めざるを得ないが、新しいビジネスモデルが登場すると、途端に陰りが生じてしまうこともある。
 企業経営の課題は、経営理念→経営戦略→ビジョンというラインを限られた経営資源の中で構築するかということにある。企業によっては、経営理念は掲げているものの、その理念を実践してどのような到達点を目指すのかを明示していないこともある。こうした企業の場合は、当然のことながら経営戦略というようなものも存在しないことになる。
 こうした企業を経営診断によって、改革する糸口を見つけけるためには、既に投下されている経営資源がどの程度効率的かつ効果的に運用されているかを測定してみることから始めなければならない。その分析は、業界平均などの過去情報との比率分析に止まらないが、それでもここを出発点にしなければ、思わぬミスリードをしてしまうこともある。
 業界や自社特有のKSF(重要成功要因)を探し出し、この要因を柱にした経営戦略を展開してきたかどうかは、客観的に第三者が分析することで明らかにされることもある。何故ならば、ビジョンも設定していなければ戦略もセットされていない場合は、何のために、どこに力点を置いて経営しているのか自覚できなくなっているからである。
 経営診断に限らず、経営改革に取り組む場合は、こうした診断のプロセスを踏むことで、個々の改善個所も見えてくるので、ここで発見された問題をミクロレベルに分解し、全体戦略とのバランスを考えながら経営改革を進めていく。こうしたプロセス思考でアプローチすることと分析技術が噛み合うことで、あいまいなものの正体が次第に明らかになる。