ベースになるのは論理思考

 優れた経営者の意思決定は、それなりの説得力をもっているからこそ社員からも受け入れられる。そのことが、組織の推進力と結びつけば、好ましい結果をもたらす可能性も高まるため、ますます求心力が強固なものとなっていく。こうした成功体験も実は大きな情報として位置づけられることになるから、今後の意思決定にも大きく影響する。
 しかし、過去において的を射た意思決定をしたことのみで、将来に向けて不確定なものを判断する資質があると判断するのは早計である。ある時点において意思決定したことがよい結果をもたらしたのは決して偶然ではなく、そこには、それまで培ってきた経験や論理的なものの考え方が根底にあったからであるとみて然るべきである。
 論理的思考が円満に育つためには、経験、模倣、モデル化というプロセスをへて、練られた概念として定着したものであると考えれば、やはり、不確実なものに対して取り組み、何らかの意思決定をする場合でも、意思決定をする根源は論理思考を抜きにしては考えられないが、問題はどのような思考スタンスでロジカルに迫ればよいのかである。
 ロジカルシンキングの基本思考で、最も重要なのは仮説思考である。仮説思考とは、「ある時点で考えられる仮の結論をもとに行動する」という考え方である。仮説を立てたら、これを検証し、課題の解決策を導いていく。そして仮説が誤りであることに気づけば、新たな仮説を立ててまた検証するというサイクルを繰り返すことで修正していく。
 ここで大事なことは、「既成概念にとらわれることなく、ゼロベースで最善の答えを見つけ出す」という姿勢である。環境変化の激しい現代においては、昔の成功体験はあまり役に立たないことを知らなければならない。以前に決定したことを修正しながら突き進むのではなく、一度白紙に戻してゼロベースで考えることが重要になってくる。
 そして、ロジカルシンキングで重要なことは、闇雲に考えるのではなく、重要なことが漏れていたり、重複して考えたりしないようにすることである。つまり、これはフレームワーク思考で情報を整理することであるから、意思決定の速い人は自分なりの定型的なフレームワークをもっていて、これを応用して問題や課題を的確に整理している。