指示された以上の仕事ができる人

 上司から指示された仕事をやり遂げるということは、命令を完璧に遂行したと解釈すれば、それ以上のことはないという解釈もできる。むしろ、指示もしないのに余計な尾ヒレをつけてしまうことにより、上司の指示をゆがめて受け取ったと解釈されてしまうことがあったりすると、却って信頼を失ってしまうことにもなり兼ねない。
 この場合、上司が意地悪なのか、それとも、自分が方向違いの解釈をしてしまったのかによって評価が異なることになるが、一般的には、その仕事が必要最小限度の満足水準をベースにして指示を出すものと考えれば、その先に期待しているものがあるはずだと推測すべきで、そこをどう察することができるかでその人に対する評価が決まる。
 そうはいっても、「コピーを取るように」といった単純に仕事の場合は、それ以上のことは望んでいないと考えても不思議ではないし、ふだんはルーチンな仕事だけしかさせていないような場合は、上司がどんな意図で仕事を指示しているのかを察する思考が育たないこともあるかで、本人の資質だけを問題にするのは片手落ちかもしれない。
 かなり以前の話で恐縮だが、ある金融機関で、集客力の増強を狙って女性を支店長に登用することにしたが、結果はあまり芳しくなかった。これなどは、登用された女性に能力が不足していたというよりも、普段から戦略的な仕事に携わらせていたかどうかが問題だったように思われる。その証拠に、その後女性の管理職は飛躍的に増えている。
 つまり、「言われたこと以外しない」というのは、本人の資質の問題というよりも、仕事をするうえでどれだけ本人に裁量権を与えているかにより、育ち方が違うという側面からも見なければならないが、そうした環境におかれているにも関わらず、一向に成長しない人もいるので何とも言えないが、少なくとも育っていないのは自分の責任が大きい。
 育っていないのか、育てられ方が悪かったのかは別として、上司からすれば「使い勝手のいい社員」は、間違いなく「空気が読める社員」の方である。かつては、鍛えられ方によって成長することに期待できたが、今は自分が変わろうとする強い意志をもたなければ、自分の潜在能力を開発することが難しい状況になってきている。