協働体制が整っている人

 組織経営を一つのシステムとして捉えれば、「共通の目標をもつこと」「協働する組織を作ること」「情報を共有しあうこと」などが不可欠な要件である。このことを基盤に組織活動を考えれば、組織を動かすために複数のメンバーが協働する体制が常に整っているのが当たり前であるが、組織が肥大化してくると何時しか共通の目標を見失いがちになる。
 それぞれのメンバーは、組織内における望ましい行動規範を無視しても、そのことが組織の目標達成にブレーキをかけるという認識は薄くなり、あるべき姿と自分の立ち位置にギャップを感じながらも、自己の利得を優先する行動をとり始める。こうした風潮が組織内に広まると、自分だけではないという奇妙な安心感が生じてくる。
 こうした状態が定着してしまうと、革新的な芽はことごとく潰されてしまい、改革の必要性を声高に叫ぼうものなら、まるで罪悪のように拒絶されてしまい、時には上司ばかりではなく同僚にまで敬遠されることになる。そこで大抵の人は敗北感を味わい、二度と改革など口にするまいと心を閉ざしてしまい悪しき組織の一員の仲間入りをする。
 テレビドラマのヒーローは、こうした外圧と戦い続け、ついには自分の苦労が実るというサクセスストーリーなるが、現実の社会では滅多にそうはならない。そもそも、疲弊した組織を変えようとしたその志そのものも、自分の立ち位置からの発想であり、それなりの説得力をもっていたかどうかも検証してみる必要がありそうだ。
 自分の価値観が他人に受け入れられないからといって、自分以外は悪であると決めつけていたのではないかという反省もなしに、拒絶されたことに悲観するだけでは、新しい戦いに挑戦することなどできない。根回しというと、些か古めかしい響きがあるが、決して悪い意味だけで使われているわけではく、成功に結びつけるための有用な手段でもある。
 周りの協力を得られるよう行動している人は、自分の考えを理解してもらうために心を砕き、いざという時に後押しをしてくれる布陣を敷いている人なのである。こうした準拠集団がどれほど威力を発揮するかをよく確かめもせず、過大な期待をもとに正論をまき散らす。自分がこうしたタイプではないかどうかよく検証してみなければならない。