派遣労働の問題点

 前回の改正では、26業務以外の一般業務についても派遣を認めるという方向に転換したものの、期間については1年と限定しているので、利用しにくいという批判があったため、これを3年に延長することにした。その結果、港湾運送業務、建設業務、警備業務を除き原則どの業務についても派遣社員という形態で労働力の提供を受けられるようになった。
 前回の改正では、派遣業務の対象業務を原則自由化するという大改正ではあったが、その自由化から除外されていた業務である港湾運送業務、建設業務、警備業務とともに製造業務も含まれていたが、今回の改正によって、派遣業務の対象とされることとなった。このため、多くの製造業では、派遣社員の活用が大幅に拡大されることとなった。
 派遣業務の拡大と共に改正された点は、派遣社員への直接雇用の申し込み義務を盛り込んだことである。労働者派遣法は、派遣社員に直接雇用の機会を提供するよう促進することが望ましいという観点から、派遣期間終了後も派遣社員を使用しようとする場合には、派遣社員に対して直接雇用の申し込みをしなければならないこととした。
 また、派遣期間の制限がない場合、その業務のために新たに社員を雇い入れる時は、その派遣社員に対し、優先的に雇用の申し込みをしなければならないとした。このように、一方では派遣業務の拡大と期間の延長を認めながら、他方では正規雇用に繋がる措置を講じるという狙いがあったものと思われるが、現時点では思惑どおりに進むとは考えにくい。
 その他にも、これまでは派遣先が事前面接を行うなどの紹介予定派遣などは禁止されていたが、派遣先にとって直接雇用する社員がどのような人物かは重要なことであるという趣旨で、従来行うことができなかった派遣就業開始前または派遣就業期間中の求人条件の明示や派遣期間中の求人、求職の意思の確認および採用内定を行うことが可能となった。
 派遣社員を活用する企業にとって、則戦力となる人材の確保や人件費の節約といった意味では大きなメリットがるものの、契約を締結してみたところ、期待したほどの能力がなかったといった問題や欠勤その他の規律違反に対するリスクもある。特に顧客リストなどの機密漏えいの可能性も考えなければならないという新たなコストも増大する。