派遣社員活用のポイント

 企業が派遣社員を活用するメリットは、通常の直接雇用とは異なった形態をとるため、景況の変化などに柔軟に対応しやすいということにある。すなわち、派遣社員の場合は、雇用契約は派遣会社との間で締結するが、実際の業務の指揮命令は派遣先の会社から受け、派遣先会社のために労働に従事するという形態であるというのが最大の特徴である。
 派遣というと、従来からあったデパートなどへの派遣店員と似ている面もあるが、この場合は、派遣元のメーカーなどがデパートに出店しているようなケースで、派遣店員がデパートの社員として働くわけではないので、派遣店員はメーカーとの間で雇用契約を締結している。したがって、業務命令もメーカーから受けることになる。
 近年は派遣社員を活用する企業が増加傾向にある。その狙いは、正社員を採用する場合と比べ、会社が今必要としている技能やノウハウを持っている人材を自社で育てるよりも、既にそうしたキャリアを積んだ人材を派遣してもらうことで、即戦力となる人材を比較的容易に見つけ出すことができるというのが魅力の一つとなっている。
 第二に、雇用調整が容易であるということが挙げられる。つまり、業務量が一定である場合は別として、現在のように市場環境の変化が激しい時代には、必要とする技能は常に一定であることは珍しいので、今日必要としていた人材では明日の業務には耐えられないという現象も起こり得る。そうした場合にも迅速に対応できるので重宝である。
 第三には、何といっても人件費を節約することに躍起となっている企業にとっては、どうしても派遣社員を活用せざるを得ないという事情があるということである。従来のように年功序列型の下では、付加価値生産性と人件費のアンバランスを解消しなければならないという切実な思いがあり、ある程度のデメリットはやむを得ないと考えている。
 こうした背景から、派遣期間の延長も認められるようになった。政令で定められている26の業務についても前回の改正で、派遣期間を3年に延長したが、今回の改正により、期間制限は廃止された。しかし、「正規雇用から派遣へ切り換えが進み、雇用の安定が保たれなくなり、労働条件の悪化も懸念されるというジレンマもある。